次期大統領暗殺計画やクーデターのうわさも~政情不安増すグアテマラ~
Japan In-depth / 2023年9月24日 13時18分
山崎真二(時事通信社元外信部長)
【まとめ】
・グアテマラ大統領選決選投票で反汚職を訴える候補が当選するも暗殺のうわさ流れる。
・検察は、新政権が発足で過去の不正追及を恐れ、次期大統領への敵対行動を続ける。
・クーデター説が出る中、次期大統領は街頭デモ呼びかけ全面対決姿勢。
■来年の政権交代実現に暗雲
グアテマラでは8月20日大統領選決選投票が行われ、6月の第1回投票で2位だった新興政党「セミージャ運動」(種の運動)のベルナルド・アレバロ氏(元外務次官)が、1位の「国民希望党」のサンドラ・トーレス氏(故コロン大統領元夫人)に逆転勝利した。アレバロ氏が有効投票の61%を獲得、トーレス氏に20ポイント以上の大差をつけた。
アレバロ氏圧勝の最大の要因は、同国で長年横行する汚職の撲滅を精力的に訴えたことだ。この選挙結果を受けジャマティ現大統領からアレバロ次期大統領へ引き継ぎ作業が行われ、来年1月に新政権が正式に発足する運びだったが、政権交代の実現に暗雲が漂ってきた。
アレバロ氏の大統領就任阻止に向けた反対勢力の動きが活発になっているからだ。現地メディアの報道によると、アレバロ氏には第1回投票で決選投票進出が決まったころから暗殺のうわさがささやかれ、同氏は身辺警護を強化した。
グアテマラ大統領選に選挙監視団を送った米州機構(OAS)の人権委員会は「アレバロ次期大統領の身に差し迫った危険があることを知りながら、必要な警護をしていない」とグアテマラ治安当局を批判した。同委の報告書によれば、アレバロ氏に対する暗殺計画が2件明らかになっているという。
■グアテマラ検事総長は米国の制裁対象
アレバロ氏の政党「セミージャ運動」への検察当局の敵対行動も目立つ。検察は第1回投票結果発表とほぼ同時に同党が政党登録の際不正な署名集めをしたとして捜査を始め、政党活動の停止を命じるよう裁判所に要請。「セミージャ運動」本部や選管事務所などで強制捜索が行われ、最近では検察が選管の許可なく、開票箱を開ける事態も起きている。グアテマラ検察が「セミージャ運動」を目の敵にするのは、検察トップのポラス検事総長とその部下の幹部がアレバロ政権発足の場合、自分たちが一転して追及されることを恐れているためとの見方が有力だ。同検事総長らは汚職捜査を進めていた検察官6人を解任し、捜査を妨害したといわれる。
バイデン米政権はポラス検事総長が反民主主義的活動を行う腐敗した人物とし、米国入国禁止などの制裁対象にしている。アレバロ氏は大統領就任後には追放された検察官を顧問に迎え入れると約束している。
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