習近平政権は「戦狼外交」をやめたのか?
Japan In-depth / 2023年10月27日 11時0分
中国共産党からすれば、今後、北京が米国と世界の覇権を争う際、米国と親密なイスラエルは中東にとって最も脅威となる公算が大きい。そのため、目下、習政権は、イスラエルよりもハマスを秘密裏に支持しているのではないだろうか。
だが、一方、次のような見解もある。
現在、中国共産党は、大きな政治・経済危機に直面し、金融危機さえ囁かれている(c)。
そこで、習近平政権は、“国家安全保障”を理由に、3年間収監中されていたオーストラリア出身のニュースキャスター、成蕾を釈放(d)した。これは、オーストラリアとの関係を改善する第一歩であり、同国首相の訪中への道を拓いたとも言える。
他方、米国は北京で開催される香山フォーラムに招待されており、両国間の軍事交流に雪解けが見られる。
このように、直近では、北京は世界への対応で外交姿勢を軟化させている。米国が中東危機対応に集中する時期、この習近平外交の変化は歓迎されるだろう。
ただ、習主席が西側との関係を緩和するためには、「戦狼外交」から身を引かなければならない。ひょっとすると、王毅など「戦狼戦士」が“犠牲”になるのではないだろうか。
今年(2023年)10月9日午後、習主席は北京の人民大会堂でシューマー米上院院内総務の率いる上院超党派代表団と会談(e)した。その際、主席は代表団に次のように語った。
「『トゥキディデスの罠』〔引用者注:従来の覇権国家である米国と台頭する新興国家の中国が、戦争が不可避な状態にまで衝突する現象〕は回避できないものではない。この広い地球は、中国と米国がそれぞれの発展と共通の繁栄を享受するのを十分受け容れられる」。
もし、これが習主席の“本音”ならば、驚くべき変化である。中国の政治・経済が立ち行かなくなったが故に、妥協したのだろうか。だが、それが単なる一時的なポーズで、今の難局を切り抜けたら、習主席はこれまで通り、世界制覇を目指すつもりなのかもしれない。
〔注〕
(a)『中央通訊社』
「イスラエル・パレスチナ紛争 中国外務省:自制と冷静さ、即時停戦を呼びかける」
(2023年10月8日付)
(https://www.cna.com.tw/news/aopl/202310080075.aspx)。
(b)『FRA』
「404共和国―中国はイスラエルとパレスチナの戦争でどのような役割を果たしているか」
(2023年10月19日付)
(https://www.rfa.org/mandarin/pinglun/404gongheguo/gzp-10192023140509.html)。
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