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「イスラエル・ロビー」とはなにか その3 アメリカ議会を動かした歴史

Japan In-depth / 2023年11月29日 23時0分

そして逆にエジプトやシリアの領内に攻めこみ、その敵領土の一部を占領した。さらにその優位を保ったまま10月24日には国連の調停による停戦に応じたのだった。





前述の1975年5月当時の交渉はこの第四次中東戦争の戦後処理に関してだった。アメリカが仲介した交渉ではイスラエルは勝者の立場から一切の譲歩や妥協を拒むという強硬態度を保持した。仲介のキッシンジャー国務長官もイスラエルのこの態度にあきれ、愛想をつかしたという感じで、交渉を中断して、ワシントンに戻った。





キッシンジャー氏自身もユダヤ人だったが、イスラエルの態度はあまりに頑迷とみて、フォード大統領にアメリカもイスラエル全面支援というそれまでの政策を修正することまでを提言した。アメリカの中東政策の「再評価」だった。その結果、アメリカからイスラエルへの武器援助が停止された。「再評価」とはとりもなおさず、それまでイスラエル支持一辺倒だったアメリカの基本政策をアラブ側にも理解を示す路線へと切り替えることのほのめかしだった。イスラエルにとっては国家存亡の重態事態だった。





アメリカのイスラエル・ロビーはこの事態に対して、ものすごい勢いとスピードで反応した。連邦議会上院のジャビッツ、リビコフ、ストーンというユダヤ系議員からまず檄が飛ばされた。もちろんイスラエル・ロビーの緊急要請に応じてだった。上院ではすぐそれに応じてユダヤ系ではないが親イスラエルの立場をとってきた有力議員たちが同調した。ジャクソン、ベンツェン、モンデールら大物議員たちである。





上院ではこの結果、すぐに合計19人の超党派議員たちの連名でフォード大統領あての書簡が起草された。以下のような内容だった。





「アメリカ政府はイスラエルの緊急の軍事、経済上の必要性に対し即応すべきだ」





「アメリカがこれからの和平交渉においてイスラエルを断固として支持することをわれわれは要請する」





「そのようなイスラエル支持の誓約こそがアメリカのいまの中東政策の『再評価』の基盤となる」





以上、要約すれば、イスラエルへの無条件の支持表明といえる骨子だった。





アメリカ上院ではその直後、この書簡になんと合計76人の議員が署名したのである。上院の定員は100人だからなんと4分の3以上という絶対多数だった。しかもその署名はわずか3週間で集まってしまったのだ。これがのちのちまで長く語られる「上院議員76人の書簡」だった。





当時の上院ではイスラエルへのアメリカの全面支持という政策に反対したり、その表明にためらう議員たちも少なくはなかった。イスラエルがアラブ側に対してあまりに強硬で傲慢な態度をとっているという受け止め方も多かったからだ。だがそういう議員たちに対してはイスラエル・ロビーの猛烈な圧力がかけられたのだった。





(その4につづく。その1、その2)





トップ写真:10日間の中東訪問を終えたばかりのキッシンジャー国務長官と話すフォード米大統領(どちらも1975年当時)出典:Benjamin E. 'Gene' Forte/CNP/Getty Images




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