イスラエル「掃討作戦」は今後一層困難に
Japan In-depth / 2023年11月30日 9時5分
特に、パレスチナにおいて十数人のタイ人人質が解放された事件は暗示的である。それにも拘らず、タイでは今年5月の総選挙を経てタクシン元首相派のタイ貢献党中心の新政権が発足したばかり。All politics is localという格言の通り、今のタイ外交にそんな余裕はないように感じられた。
続いては、いつものパレスチナ情勢だ。筆者の見る現時点での状況は次の通り。
●一部ながら人質が解放されつつあることは喜ばしいが、これで問題が解決する訳ではない。人質解放が続き、「戦闘の一時停止」が実質的な「停戦」になれば、厳しい言い方だが、結果はハマスの勝利、イスラエルの敗北となるだろう。イスラエルにとっては戦闘を休止するか、停戦するか、休戦するかの判断が極めて難しくなる。
●ちなみに、これらの概念には若干の混乱が見られる。英語報道では現在の状況はtemporary truceであるが、日本の一部のメディアはこれを「一時休戦」と訳していた。さて、これは一体何が問題なのか。
●英英辞書を引くと、truce, noun:は a short interruption in a war or argument, or an agreement to stop fighting or arguing for a period of time:とある。すなわち、truceとは第一義的に交戦国の思惑が一致する「戦争状態の短期間の中断」であって、「一時休戦」では必ずしもないのである。何故そんな細かいことを言うのか?
●通常「休戦」はarmisticeの訳語であり、「停戦」の長期化・正式化を意味する概念だ。英英辞書でもarmistice, noun: はa formal agreement between two countries or groups at war to stop fighting for a particular time, especially to talk about possible peace:とあり、第一義的には「交戦国が和平を議論するために戦闘を停止する公式の合意」を意味する。こう考えてくると、「一時休戦」なる訳は一種の形容矛盾に近いのかもしれない。
●一方、「停戦」とはceasefire, noun: an agreement, usually between two armies, to stop fighting in order to allow discussions about peace:すなわち、「交戦国が和平を議論するために戦闘を停止する(必ずしも公式ではない)合意」であり、armisticeほど正式な合意ではない(逆に言えば、停戦の方が破れやすい)ようだ。
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