1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 社会
  4. 社会

日本への最大脅威の中国海軍とは(上)アメリカの新刊書が立体的な光を

Japan In-depth / 2023年12月1日 17時23分

現実に中国海軍の実態を熟知することはいまの国際情勢を揺さぶる米中両国の対立でのアメリカ側にとっても自国の存亡にさえかかわるほどの戦略的認識の基盤だといえよう。





中国の海軍力は日本の国家安全保障にとっても最大の脅威となってきた。日本の固有の領土の尖閣諸島周辺に対する中国側の武装艦艇の連日のような侵入は、その象徴である。





日本の領海やそのすぐ外縁の接続水域に頻繁に侵入する中国側の艦艇は先駆が中国海警の所属とされる。だが中国海警という機構は中国人民解放軍の海軍の直轄下にある。しかも実際に中国海警が使って尖閣周辺の日本領海に送りこんでくる艦艇は「公船」と呼ばれるが、つい最近まで中国海軍に所属していた数千トン、あるいは1万トン以上の軍艦なのである。





さらに尖閣周辺の海域では日本側に侵入してくる中国海警の艦艇の背後にはいつも中国海軍の軍艦が控えている。いざという際に日本の海上自衛隊やアメリカ海軍との衝突に備えての布陣なのである。





中国海軍は米中対立のなかでも重要な役割を果たしてきた。アメリカが最大の懸念や警戒の対象とする中国側のアジアでの軍事膨張も現場での主役は中国海軍だった。





中国は2013年ごろから南シナ海で領有権紛争の続くスプラトリー諸島(中国名・南沙諸島)を海軍力で制覇した。フィリピンやベトナムの領有権主張を問答無用として抑えつけての無法な軍事行動だった。





アメリカは当時、民主党のオバマ政権だった。リベラル派の軍事忌避の体質からか、オバマ政権はこの中国の軍事行動に明確な対応をしなかった。だがアメリカ全体としてはやがて中国のこの軍事拡張への警戒を急速に高めていく。





そして2017年に登場した共和党トランプ政権は中国の軍事的野望への正面からの対決を宣言して、米中両国の本格的な対立が始まったのだった。いまや米中対立は全世界に影響を及ぼす一大激動である。その契機となった中国側の軍事動向の先兵が中国海軍だったのである。





ましてバイデン政権下の現在では中国が台湾を軍事攻撃することによる台湾有事が切迫感さえもたらす重大な危機シナリオとなった。台湾有事は当然ながら日本にも国運を左右するような巨大な影響を及ぼす。その台湾有事の最大の主役も中国の海軍なのである。





だから中国海軍の実態を総合的に知ることは日本、アメリカ、さらには全世界にとっても喫緊の戦略的作業だといえるのだ。





本書「毛沢東の兵、海へ行く」の著者トシ・ヨシハラ氏はこの作業には最適の人物であろう。





中華人民共和国という共産党独裁の国家は日本やアメリカの自由民主主義の政治システムと異なり、その現実の動向は秘密のベールに覆われている。対外的な公式発表と実際の動きとが大きく異なる国家活動の領域が多い。そのもっとも顕著なのは軍事だといえよう。軍事についての中国当局の公式言明などからは軍拡の実態はなにもわからない、ということである。









▲写真 「毛沢東の兵、海へ行く」トシ・ヨシハラ著 出典:扶桑社





(つづく)





トップ写真:南シナ海での通信中に中国海警局の船に接近するマレーシア海軍の隊員が通報している(2014年3月15日 マレーシア・クアンタン)出典:Rahman Roslan / Getty images




この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください