日本への最大脅威の中国海軍とは(下)毛沢東の兵が巨大な海軍に
Japan In-depth / 2023年12月3日 17時0分
古森義久(ジャーナリスト/麗澤大学特別教授)
「古森義久の内外透視」
【まとめ】
・トシ・ヨシハラ氏は戦略予算評価センターの上級研究員。
・氏の研究手法は完璧に近い中国語の会話や読解の能力を駆使する点に特徴がある。
・「毛沢東の兵、海へ行く」は、中国の脅威にどう対処するかに苦慮する側への貴重な指針。
中国の実態を探る作業ではやはりアメリカが先頭に立っている。中国を長期にわたる競争相手、さらには脅威とみなし、その中国がふつうに考察するだけでは実態がわからないとなれば、自然に積極果敢の中国についての研究や調査を実施する。官民両方での広範で深層にわたる中国研究である。その対象では利害関係のぶつかる他国にとってもっとも危険な領域としての軍事が筆頭となる。
アメリカ側のその情報収集では政府のインテリジェンス(諜報)機関の中央情報局(CIA)や国家情報局(NSA)による秘密やハイテクの活動も枢要となる。その結果、取得された種々の情報の多くは民間の研究機関にも一定の守秘条件をつけて与えられる。だからアメリカ全体としての中国研究はまず基本情報が豊かとなるわけだ。
こうしていまのアメリカの中国研究は徹底しており、とくに中国の軍事の研究という分野には「ベスト・アンド・ブライテスト(もっとも優秀で聡明)」とも評される逸材が集まっている。今回、紹介した「毛沢東の兵、海へ行く」の著者のヨシハラ氏はそのなかでもとくに中国の海軍力や海洋戦略についての研究では先頭走者とされるのだ。
ヨシハラ氏はその名前からも明らかのように日系アメリカ人である。しかもその出自は中国との特別なかかわりをも含む。
彼は日本人の商社勤務の父、台湾人の母のもとに日本で生まれた。しかし幼児から父の台湾駐在にともない、台湾で育ち、少年時代からアメリカに移り、高等教育はすべてアメリカで受けた。アメリカでは大学時代から学術的な中国研究の道を歩み、やがてアメリカ海軍の中堅士官向けの高等再教育機関の海軍大学校に所属して、教授となる。
海軍大学校には付属の中国海洋研究所という機関が存在する。ヨシハラ氏はこの研究所でも上級研究員として調査や分析の活動を続けた。ヨシハラ氏はアメリカ北東部のニューポートという港町に存在する海軍大学校で研究と教育に10数年を過ごした後、ワシントンの戦略予算評価センター(CSBA)に移り、現在までその上級研究員として中国の軍事、とくに海洋戦略についての研究活動を継続している。
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