「イスラエル・ロビー」とはなにか その5 フルブライト議員への攻撃
Japan In-depth / 2023年12月11日 11時0分
この言葉はもちろんイスラエル支持勢力への批判の表明だった。本来、選挙には強かったフルブライト議員だからこそ、自分自身の信念に基づくこんな言葉をイスラエル支持勢力の反発を恐れずに、述べることができたのだといえよう。だがそんなフルブライト議員までがイスラエル支持勢力の戦闘的な選挙キャンペーンに敗れてしまったのだ。
この時期、つまり1970年代、アメリカ政府のイスラエル超重視の政策にはアメリカ軍部からも批判が表明されたことがあった。1974年、イスラエルの敵のアラブ産油諸国がイスラエルの軍事動向やその背後にいるアメリカ政府への抗議をこめて石油の禁輸措置(エンバーゴ)をとった。当時の最大手の石油輸入国のアメリカにも大きな負の影響があった。
そんな時期にときのアメリカ軍統合参謀本部議長のジョージ・ブラウン将軍が以下のような発言をした。
「石油エンバーゴの結果、アメリカ政府はやっと強気になってユダヤ人の過度の影響力を抑え、イスラエル・ロビーを破れるようになるかもしれない。アメリカのユダヤ人たちは金融機関や報道機関を意のままに操っているのだ」
ブラウン議長のこんな言葉は制服の軍人では最高位にある人物の発言としては軽率だといえた。本音をあまりに軽く語っていたからだ。デューク大学での演説会での大胆な発言だった。
当然ながらユダヤ系アメリカ人の多くが激怒した。抗議も猛烈だった。その結果、ブラウン議長はフォード大統領からの命令でこの発言を謝罪し、事実上、撤回してしまった。
だがブラウン議長はこの演説では軍人の立場を本音で表明する形で次のような発言もしていたのだ。
「イスラエルの代表がわれわれのところにやってきて軍事援助を要求する。その援助によるしわ寄せでヨーロッパの軍備が一時、手薄になることを懸念して、われわれ軍部が『そんな巨額のイスラエルへの軍事援助はアメリカ議会が認めるはずはないから無理だろう』と断る。するとそれらのイスラエル支持勢力は『アメリカ議会を心配する必要はない。私たちがアメリカ議会を動かす』と明言する。外国政府の支持勢力がアメリカ議会を意のままにするというのだから、あきれかえる発言なのだが、現実にアメリカ議会がその通りに動くのだから二重に驚かされてしまう」
イスラエル・ロビーはアメリカの政治にこれほどまで大きな影響力を有していた時代があったのである。
(その6につづく。その1、その2、その3、その4)
トップ写真:ウィリアム・フルブライト議員(1905年~1995年)1970年8月21日 出典:Photo by Hulton Archive/Getty Images
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