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鮎川義介物語④「大衆持ち株会社」で財閥と一線画す

Japan In-depth / 2024年1月3日 23時0分

軍艦や大砲を製造すれば、政府が買ってくれるかもしれないが、自動車は国民が対象。旧来型の財閥は、本当に大衆向けに販売する自信がなかったのです。それに、自動車は、巨額の設備投資を伴って大量生産しなければ採算がとれないのです。4、5年無配を覚悟しなければならない。





岸は日ごろの考えを鮎川にぶつけました。それを聞いた鮎川はおもむろに口を開きました。





「日本国民はすぐに、自動車を買えるほど豊かになる。早急に自動車産業を日本に浸透させることが重要だ」。





「自動車の大量生産は可能でしょうか」。岸は尋ねました。





それに対し、鮎川は踏み込んだ発言をしました。





「私は若い時、アメリカで職工として2年生活した経験から言えるのは、日本人は西洋人に比べ、体力や腕力は劣るが、手先は器用だし、頭も負けていない。神さまは公平だ。日本は領土や資源は恵まれていないが、工業製品を作るための人的資源は豊富だ。原料や材料を輸入して、手先の器用な日本人が工業製品を輸出する。これこそが日本が生き残る道です。特に、自動車産業は、将来の産業の担い手になる。それなのに、日本が参入できないのは、はなはだ遺憾だね」。





さらに、語気を強めました。





「日本で早急に自動車を普及させるためには、アメリカの技術を取り入れ、日本に自動車産業を根付かせればいいじゃないですか」。





この言葉を聞いて岸は、我が意を得たりとばかりに膝を打った。





「我が商工省も、鮎川さんのやり方には賛成しています。全面的に支援します。うちの大臣の町田忠治さんも自由貿易論者で、外資との提携はよろしいと申しています」。





それに対し鮎川は言葉を続けた。





「資本を十分に投入し、適切な指導と訓練が行われれば、日本人が日本で自動車工業を築けるだろう。そのために、アメリカから専門家の皆様をお招きしました。私はアメリカの人や会社と密接に協調して、新事業を始めたい。いささか遠大な望みかもしれませんが、新会社を通じて太平洋の両岸に位置する二つの国、日本とアメリカの民の相互理解を促進したい」。





鮎川は岸に、自動車産業への参入に意欲を持った経緯を語りました。





(⑤につづく。①、②、③)





トップ写真:横浜で製造された国産車「ダットサン」に乗る秩父宮雍仁親王(本文とは関係ありません)出典:Bettmann / GettyImages




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