NHK絶叫アナ「命を守る呼びかけ」とは 令和6年能登半島地震
Japan In-depth / 2024年1月4日 11時0分
それを思い出し、こうした絶叫中継は「いますぐ逃げなくては大変だ」という緊迫感を高齢者に与えるものとして有効だと考え抜いてやっているのだと気づいた。
その後調べてみると、NHKのアナウンス室は、ことばで命を守るにはどうしたらいいか考え続けてきたことが分かった。「NHKアナウンサーによる命を守る“防災のよびかけ”」というホームページにその取組みが紹介されている。
災害報道に備えてNHKのアナウンサーが改善を重ねてきた呼びかけの文言、および音声(AIを活用した合成音声)がそのサイトで公開されている。東日本大震災の時、時間的猶予があったのに多くの人が犠牲になった反省から、どう情報を伝えたら人は逃げるのか、どんな言葉なら人の行動を促せるか、被災者や専門家に取材して、呼びかけの文言を作成、蓄積してきたのだという。大雪、大雨、熱中症バージョンがある。
NHKには約500人のアナウンサーがいるという。各地域でもこの呼びかけをマニュアルにして「防災教室」を開催している。
NHKの資料をみると、「大雨」の場合を取り上げ、「雨が降り続いて降り方が強まった場合」には、視聴者に「いつもと違う状況を感じ取って」もらうために、「いま避難しないと危ない!」という「願いを言葉に込めて」アナウンスする、と明記している。
さらに、ポイントとして、「はっきり/強めの口調で」、「いつもより2段階くらいギアを上げるイメージ」で、としている。
視聴者からは感じ取れないかもしれないが、アナウンサーは普段からかなり「声を張って」読んでいる。単に大きな声で読んでいるというわけではなく、どの部分が重要か考えながら、強弱やイントネーションを変えて視聴者に内容が伝わるよう、考えながら読んでいるのだ。それを2段階ギアを上げる、というのは視聴者から見たらかなりの強調具合いだと思う。
そしてこの資料を見る限り、次の段階として「最悪期」=「非常事態を伝える」がある。そこでは、「命最優先!なんとかしのいで!」との気もちを込めて、「深刻さを伝える」と「冷静な判断を呼びかける」を両立させることがポイント、とされている。
「大津波警報」が発令された瞬間に、山内アナの声のトーンが大幅にギアアップしたと当時に、「周りの人にも、津波が来るぞ高台に逃げろと呼びかけて逃げること!」と伝えながら、「大人よりもこどもの方がストレスを感じていると思います。しっかり手を握ってあげたり、抱きしめてあげたりしてください」などと呼びかけたのは、まさにこのマニュアルに則ったものだと思われる。実際に理論が実践されたわけだ。
正直、全国ネットであり、かつマンパワーがあるNHKならではの取り組みであり、今回はその成果が出たと思う。NHKの中継を聞いて避難した人も多かったのではないだろうか。
自然災害が起きるたびに必ずといっていいほど「こんなことが起きるなんて想像もしなかった」という被災者のインタビューが紹介される。人は忘却の生き物だ。東日本大震災も発生からすでに13年たった。
日本列島、地震はいつ、どこで起きるかわからない。災害時の備蓄は万全か?、家族が離れ離れになった時の連絡の取り方は?など、お正月は家族がそろっている時期でもあり、話し合っておくことが重要だ。
トップ写真:令和6年能登半島地震により倒壊した家屋(2024年1月3日石川県 穴水市)出典:Tomohiro Ohsumi/Getty Images
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