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「イスラエル・ロビー」とはなにか その6 最有力組織の実態

Japan In-depth / 2024年1月4日 23時0分

2024年の時点でのアメリカの政治をみても、連邦議会の下院ではユダヤ系の議員が合計28人、存在する。そのうち25人が民主党、3人が共和党である。伝統的にユダヤ系は民主党傾斜が多いのだ。下院全体の議席は435だから、ユダヤ系議員はその全体の6.4%ほどとなる。上院では100の議席のうちユダヤ系は10人とされる。その全議員が民主党だという。立法府でも最高の権限を有する連邦議会上院の1割はユダヤ系議員なのだ。





もちろんユダヤ系議員たちが自国のアメリカ政府の政策に関して、すべてイスラエルを利する決定に賛同するわけではない。だが国民全体のなかでの比率が2.4%にくらべれば、はるかに多い10%という数字を議会上院では占めているのだ。





ちなみに民主党のバイデン政権の現閣僚ではブリンケン国務長官、ガーランド司法長官など合計6人がユダヤ系とされている。





さてそんな背景のなかでイスラエル・ロビーの中心組織とされるAIPACは具体的にどんな役割を果たしてきたのか。





AIPACの主要任務はアメリカの議会や政府の政策をイスラエルに有利に保つという一点に尽きる。ただしイスラエルに不利な政策を阻止する作業も表裏一体となっている。そのためにはこの組織はアメリカの民主、共和両党に影響力を行使する。





前回の2020年の大統領選の際にはAIPACが主催した政治集会に民主党のジョセフ・バイデン、共和党のドナルド・トランプの両候補が同時に参加した。その前の2016年の大統領選挙でもAIPACの政治討論会に民主党側のヒラリー・クリントン、共和党のトランプ両候補が同時に顔を出し、それぞれ演説をしている。要するに民主、共和両党が国政の場でこのイスラエル支援組織への親密さを示すほど、強大な影響力を持つロビー団体なのである。





AIPACはアメリカの立法府と行政府の両方に影響力を行使するが、その重点はあくまで立法府、つまり議会が主体となる。他のイスラエル・ロビーの諸団体がホワイトハウスや国務省、国防総省など行政府への働きかけを担っているのだ。





AIPACは公式の経費としては毎年、7000万から8000万ドルという金額を発表している。だが実際に使われる諸経費はその何倍もだろうというのがワシントンのロビー界での常識のような推測である。なにしろAIPACの究極の目的はアメリカ政府からイスラエル政府への経済、軍事その他あわせて年額30億ドルにものぼる援助を確保することなのだ。同時にイスラエルに敵対するイランやイラクへのアメリカの軍事攻勢をプッシュするという大規模でどぎつい政策や戦略をもその使命としているのだ。だからAIPACのようなイスラエル・ロビーはアメリカの中東政策全体を左右してきたともいえるのである。





(つづく)





トップ写真:AIPAC年次政策サミットに出席する、ブリンケン米国務長官(2023 年6月5日 米・ワシントンDC)出典: Chip Somodevilla/Getty Images




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