台湾総統選、アジア国際政治の流れを決める
Japan In-depth / 2024年1月17日 11時0分
これに対し、リベラル紙は「対中協調路線の国民党の政権返り咲きがさらに遠のいた今こそ、中台は軍事的な緊張を緩和し、対話再開へ踏み出すべき時だ」(朝日)と主張している。
以上は、いずれも選挙前から決まっていたような主張ばかりで新味はない。今回は、同一政党の総統候補が「三期続けて勝利するのは初めて」との指摘もあったが、意味不明だ。中国の圧力の下での民主選挙である以上、当然の結果ではないか。
●中国の選挙干渉は失敗?
今回も中国の対台湾「認知戦」などによる選挙干渉が極めて組織的に行われたようだが、結果的には今回も中国側の工作は失敗した。特に、国民党の馬英九前総統が投票日直前ドイツメディアに「習近平氏を信用するべきだ」と発言したことは大失敗ではなかったか。「贔屓の引き倒し」とは正にこのことである。
日本での台湾関連報道は、なぜか「国民党は親中、民進党は親米」とされがちだが、実態は必ずしもそうではない。国民党はワシントンに事務所を持ち対米関係維持に努めている。「国民党が親中」なのではなく、「馬英九が親中」と考えた方が良いかもしれない。
中国側の失敗は過去にもあった。1996年の最初の総統民選で、中国は台湾海峡にミサイルを撃ち込み、李登輝は勝利した。前回の総統選では香港での治安維持強化措置が逆効果となり、それまで劣勢だった蔡英文が勝利してしまった。
それもあってか、今回中国は極めて慎重だった。派手な動きはせず、フェイクニュースを流したり、非軍事的手段で揺さぶりをかけたりしたが、それでも台湾有権者はあまり動じなかった。中国はもう少しやり方を考えた方が良いのではないかね。
●二大政党時代の終焉?
今回の第三政党・民衆党の躍進は、二大政党時代の終焉を意味するとの見方もある。しかし、民衆党が今回票を伸ばした理由は、台湾経済の伸び悩みと若年層を中心とした将来への不安ではなかったか。
冷戦直後なら「親中か」、「反中か」で世論が二分されても仕方なかろうが、そうした二元論を越え経済・社会が多様化しつつある21世紀の台湾では、多様な社会各層の声を吸い上げる「第三政党」が躍進しても決して驚くべきではないだろう。
最後に、米大統領選・アイオワ州共和党党員集会について一言。トランプ候補は断トツの51%を獲得し圧勝した。躍進が共和党の一部で期待されたヘイリー候補は意外にも3位となり、2位はデサントス候補が確保した。但し、これだけでトランプが今後も「圧勝を続ける」とか、ヘイリーは「終わった」などと即断するのは時期尚早だ。
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