「イスラエル・ロビー」とはなにか その7 アメリカ議会の態度を変える
Japan In-depth / 2024年1月17日 17時0分
ケネスはこの強力なロビー組織の創設者としてイスラエル政府とも密接な絆を保ち、アメリカの援助、とくに議会でのイスラエル支援をしっかりととりつけてきたのである。だからケネンはイスラエル・ロビーの生みの親、育ての親ともいえるのだった。
AIPACの活動は1973年の第4次中東戦争でも歴史的な成果をあげたとされている。
イスラエルはこの戦争でスエズ運河をアラブ側に奪回され、一時はきわめて不利な状況に追いこまれた。そのためイスラエル政府はアメリカに対して新鋭のファントム・ジェット戦闘機を始めとする総額22億ドルの新たな軍事援助を緊急に要請した。しかし当時のアメリカのニクソン政権は15億ドルが最大限だとして議会に提案した。国務省は15億ドルでも多すぎるという見解を打ち出した。当時の上院外交委員会の委員長ウィリアム・フルブライト議員もどんなにその額が多くても15億ドルだとする意見を明確に述べていた。
ところがAIPAC(アメリカ・イスラエル公共問題委員会)はこの議会の流れ、さらには政府の方針をも変えてしまったのだ。連邦議会上下両院の公聴会に独自の証人を送りこみ、イスラエルへの軍事支援の増額を切々と訴えさせた。各議員への個別のロビー活動も草の根の選挙民を動員して熱心に展開した。その結果、イスラエルの緊急援助は22億ドルという当初のイスラエル政府の切望額をみごとに勝ち取ったのだった。
アメリカの議会が大統領の提示した外国の援助額を削るとは、しばしばある。だが逆に大幅に増額してしまうという事例はきわめて珍しかった。AIPACに象徴されるアメリカのイスラエル・ロビーは伝統的にそんな異様な力を発揮してきたのである。
(その8につづく。その1、その2、その3、その4、その5、その6)
トップ写真:シリアとエジプトがスエズ運河を越えて開始した攻撃を受けてゴラン高原を登るイスラエル戦車(1973年10月8日ゴラン高原)出典:Daniel Rosenblum/Keystone/Getty Images
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