バイデン政権の対外政策の欠陥とは その3 ハマスも感知したアメリカの弱さ?
Japan In-depth / 2024年1月26日 17時18分
古森義久(ジャーナリスト/麗澤大学特別教授)
「古森義久の内外透視」
【まとめ】
・ハマスによるイスラエル攻撃の背景にはバイデン政権の弱さがある。
・アメリカの弱さは軍事力の弱さではなく、バイデン政権がそれを押さえているゆえの「弱さ」が問題。
・大統領選で共和、民主いずれが勝利しても、反米勢力へはいざという時には力を使うという姿勢が強まる。
―― ウクライナでは反転攻勢の成果が上がらないなか、中東ではハマスがイスラエルを奇襲するという事態も起こりました。この両事態に関連があるとみるべきでしょうか。
古森義久 アメリカはロシアの侵攻以来、ウクライナを全面的に支援をしてきたわけですが、先がみえない戦いが続いています。共和党の保守派の中には、本当のアメリカの脅威である中国に対する抑止をきちっとやるためにも、ウクライナへの援助を削減も含めて考え直さなければならないという議論が出てきて、しかも強くなっています。
そうしたなかで、昨年10月7日にハマスがイスラエルに奇襲攻撃をかけて、1400人のイスラエル人を殺して、外国人を含む数百人のイスラエルの人々を人質に取った。これは明らかな国際条約違反です。にもかかわらず、世界中で反イスラエルデモがおこり、日本ではメディアが人質を取った行為をまったく批判せず、むしろ少しだけ人質を解放したことを評価している。
アメリカ国内でもハマス支援のデモが起こり、バイデン政権は困っているけれども、アメリカ政治の本質をみれば、イスラエル支援は絶対に揺るがない。
一方、イスラエルという国をこの世から抹殺しなければならないと言明しているのがハマスですから、イスラエルが国家として存在する限り、永遠に戦いは続くのです。
―― それにしても、ハマスはいまなぜ奇襲したのか、どういう背景なのでしょうか。
古森 実はいま、イスラエルを国家として消滅させるべきだと言っているのは、世界中でハマスとヒズボラ(レバノンのシーア派組織)、国家としてそれらの組織を支援しているイランだけなのです。
逆に、ここ数年間、中東の国々の中にはイスラエルの存続を認めるどころか、UAE(アラブ首長国連邦)やバーレーンのようにイスラエルと外交関係を結ぶ国も出てきたのです。ハマスとしては、そうした孤立状態を何とかしなければならない。それで大規模な奇襲をしたのだろうと思います。
もう一つ、イスラエル攻撃の背景として考えられるのが、ここでもバイデン政権の弱さです。ハマスも攻撃すれば当然、イスラエルが全面的に反撃してくることは分かっていた。問題は、アメリカがどの程度の力でイスラエルを支援するかということです。結局、ハマスやその背後にいるイランは、バイデン政権下でアメリカの中東関与や対イスラエル支援の力は弱くなったと読んだのだろうと思います。ここでもアメリカの後退がイランやハマスにつけこまれて奇襲に踏み切ったといえます。
-
-
- 1
- 2
-
この記事に関連するニュース
-
イスラエルがハマスと同時にヒズボラにも戦争を仕掛けたがる理由
ニューズウィーク日本版 / 2024年6月29日 21時18分
-
「トランプ陣営の世界戦略がさらに明るみに」その5(最終回)日本との同盟を超重視
Japan In-depth / 2024年6月28日 19時0分
-
イランの核武装への兆候か? イスラエルとの初交戦と大統領墜落死が示すもの
ニューズウィーク日本版 / 2024年6月27日 12時40分
-
「トランプ陣営の世界戦略がさらに明るみに」その3 中国こそが最大の脅威
Japan In-depth / 2024年6月27日 11時0分
-
サター氏に聞く その4(最終回)尖閣はどうなるか
Japan In-depth / 2024年6月1日 19時0分
ランキング
-
1粗大ごみから出た現金を職場懇親会に流用、黙認した処理施設係長を懲戒処分
読売新聞 / 2024年6月29日 15時48分
-
2台湾から「能登応援」被災1万世帯超に見舞金 NGO団体が配布開始
産経ニュース / 2024年6月30日 7時0分
-
3瑠奈被告「私の首を絞めることが責任だ」父親「私は誰も殺しません。私にはできません」約3年間の“狂乱”の音声データ、証拠として提出…犯行認識は「おじさんの頭を持って帰ってきた」の後、娘に従うしかなかった関係を父親証言へ ススキノ首切断事件
北海道放送 / 2024年6月30日 7時11分
-
4マンションで男女死亡 腹部に刺し傷、無理心中か
共同通信 / 2024年6月29日 21時46分
-
5面識のない男性を“結婚相手”と思い込んだか 男性の部屋に侵入した40代の女を現行犯逮捕
STVニュース北海道 / 2024年6月30日 10時28分
複数ページをまたぐ記事です
記事の最終ページでミッション達成してください
![](/pc/img/mission/mission_close_icon.png)