「危機管理マニュアル」その4 不祥事会見の基本③質問への答え方
Japan In-depth / 2024年2月21日 18時48分
これはまずい。
こう答えると、新聞やテレビの見出しは
「〇〇社長、辞任へ」
と書かれてしまう。
辞めるなんて一言も言ってないのになぜ!?と憤慨しても始まらない。事態が収拾したら考える、と言っているので辞めないかもしれないが、辞めるかもしれない。なら「辞任へ」と書いても間違いではない。記者はそう、考える。
しかし、「辞任へ」と書かれた方はたまったものではない。見出しを見た読者がこの社長は辞めるものだと思ってもおかしくない。そう書かれてから怒っても後の祭り。言葉だけが独り歩きしていく。
正解は:
「辞任は考えておりません。一刻も早く原因を究明することと二度と同じ問題を起こさないための対策を取ることに全力を尽くします」。
明確に辞任を否定することが最重要であり、それを頭に持ってくるべきなのだ。
■ 結論を先に
もう一つ例を。
「奥ゆかしさ」を美徳とする日本人ならではなのか、相手の言うことに対していきなり「NO」というのは失礼だという深層心理が私たちの中にはある。欧米を旅行していて道を聞いた時に即座に“I do not know.”と言われてがっくりきた経験があるご仁も多かろう。
しかし、こと不祥事会見に置いて、「奥ゆかしさ」は全く必要がない。いや、むしろあってはならない。
相手は何とか自分たちのストーリーにそった答えを引き出そうとする。その答えをこちらが言いたくない場合、もしくは言えない場合は、相手の引っ掛け質問、誘導質問に乗ってはいけない。
たとえば、「こんな事件が起きたのは上からの指示があったからでしょう?組織ぐるみだったのではないですか?」
よくある質問だ。マスコミは「組織ぐるみ」が大好きだ。何とかその会社を悪者に仕立て上げたい。そのための言質を何とか取りたい。だからこう聞く。
ダメな回答例。
「私は全く知らなかった。なぜこんなことが起きたのか。現場がやったんじゃないですか?」
誰の答えかバレバレだが、これは良くない。
まず、組織ぐるみを否定していない。かつ自分は責任逃れ。加えて現場に責任を押し付けようとしている。悪印象しかない。
正解は:
「組織ぐるみということはありません。なぜこのような問題が起きたのか、私が先頭に立ち、第三者の目を入れて今原因究明に全力を挙げています」。
こういうにとどめておくのが最善であろう。
仮に会見に臨んでいる人間が現場に指示して何らかの不祥事が起きていたとしたら、リーガルリスクがあるから、会見の場でそれを認めるわけにはいかない。こう答えるのが精一杯だ。
まずは「組織ぐるみ」と書かれないことに注力すべきで、それを否定する。かつ、原因究明に真摯に取り組んでいる姿勢をアピールするのがこの時点でベストだ。
「結論を先に」。「否定すべきは否定する」。
この2つは、不祥事会見に置いて、質問への答え方の基本中の基本なのだ。
(その5につづく。その1、その2、その3)
トップ写真:イメージ(本文と関係ありません)出典:webphotographeer/GettyImages
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