トランプ政権の対日政策への日本側の錯誤
Japan In-depth / 2024年2月29日 23時0分
共同声明は両国の防衛協力の拡大、中国の尖閣諸島への軍事攻勢に対するアメリカの防衛誓約、北朝鮮の軍事脅威への日米共同対処などから経済面でも両国の絆の深化をうたっていた。日米同盟の強化として理想的な骨子だった。
だが日本側の一部では同大統領が理不尽で強硬な要求を突きつけてくるという予測があった。主要メディアは会談の直前まで同大統領が安倍首相に自動車や為替さらに在日米軍駐留経費の諸問題で厳しい要求をぶつけてくるから覚悟せよ、と大キャンペーンをはっていたのだ。
だがこの予測がみごとに外れた。トランプ大統領はそんな対日要求はまったくしなかったからだ。まさに日本側の一部の錯誤であり、錯乱だったのだ。その実例を具体的に紹介しておこう。
朝日新聞の2017年2月11日の朝刊第一面の記事だった。「車貿易や為替 焦点」という大きな見出しの記事が掲載された。本文の冒頭は以下のようだった。
「日米首脳会談でトランプ氏は自動車貿易を重要課題とする構えで、二国間の貿易協定や為替政策に言及する可能性もある。通商・金融分野をめぐり、どのようなやりとりが交わされるか焦点となりそうだ」
朝日新聞の前日、つまり同2月10日の夕刊記事はもっと明確だった。「自動車、重要議題に」という記事は冒頭で次のように述べていた。
「トランプ米大統領が10日の安倍晋三首相との日米首脳会談で、自動車貿易をめぐる協議を重要議題に位置づけていることがわかった」
しかし実際の首脳会談では自動車問題も為替問題も出なかったのだ。その事実は朝日新聞自身も2月12日朝刊の記事ではっきりと認めていた。
「トランプ氏が問題視していた日本の自動車貿易や為替政策も取り上げられなかった」
誤報を認めたのである。
その後の4年に及ぶ日米関係でもトランプ政権が自動車や為替で日本側に抗議や要求をした公式記録はみあたらない。
在日米軍駐留経費についても日本側の一部で「トランプ政権は在日米軍の駐留経費の大幅増額を求めてくる」という予測が語られた。だが実際にはそんな要求はなかった。
逆にトランプ政権のジェームズ・マティス国防長官が「日本の在日米軍駐留経費負担は全世界でもモデルだ」と礼賛した。トランプ大統領も「米軍駐留を受け入れてくれることへの日本側への感謝」を述べた。
こうした的外れはトランプ政権に対する日本側の対応が無責任かつ錯誤だった産物だといえよう。反トランプ錯乱症候群の実例とされても、やむをえないだろう。
日本の「識者」がトランプ氏の片言隻句を切り取り、悪い方向への絵図を描くという定型だろう。そんな悪習はそろそろ終わりにすべき時期である。
トップ写真:千葉の茂原カントリークラブでゴルフをするために到着したドナルド・トランプ米大統領を安倍晋三首相が出迎えた(2019年5月26日 千葉県)出典:Pool / Getty Images
-
- 1
- 2
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
韓国大統領府、同盟は「超党派的」=安保協力の揺らぎ警戒―バイデン氏大統領選撤退
時事通信 / 2024年7月22日 16時29分
-
岩田明子 さくらリポート トランプ氏再任なら懸念される「北朝鮮外交」拉致問題解決を迫ることができるのか 暗殺未遂事件、自民総裁選にも影響
zakzak by夕刊フジ / 2024年7月17日 6時30分
-
トランプ氏が痛烈批判 バイデン氏の「弱腰」外交に根強い懸念 中朝露などの増長招いた
産経ニュース / 2024年7月14日 12時0分
-
欧州、トランプ氏の外交情報収集急ぐ 前政権高官と相次ぎ会談
ロイター / 2024年7月10日 13時26分
-
「トランプ陣営の世界戦略がさらに明るみに」その5(最終回)日本との同盟を超重視
Japan In-depth / 2024年6月28日 19時0分
ランキング
-
1立民・野田氏、代表選出馬に慎重=「保守系」望ましい
時事通信 / 2024年7月22日 16時19分
-
2東海道新幹線の復旧遅れ 「衝突した保守車両、破損ひどく」
毎日新聞 / 2024年7月22日 20時54分
-
3「妨害するつもりはなかった」“ひょっこり”運転の男 初公判で起訴内容を否認
チバテレ+プラス / 2024年7月22日 18時15分
-
4【東海道新幹線】JR東海「きょう中の運転再開は厳しい」 一部列車を除き“終日運転取り止め”を発表 名古屋~浜松で運転見合わせ続く
CBCテレビ / 2024年7月22日 20時30分
-
5「どうにか帰りたい」夏休みを直撃、酷暑も追い打ち 新幹線運転見合わせで新大阪駅大混乱
産経ニュース / 2024年7月22日 15時18分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください