もしトランプ政権になれば その4 朝日新聞の大誤報
Japan In-depth / 2024年3月23日 11時0分
両首脳の共同声明は両国の防衛面での協力の拡大や強化、中国の尖閣諸島への軍事攻勢に対するアメリカの防衛誓約、北朝鮮の軍事脅威への日米共同対処などから経済面でも両国の絆の深化をうたっていた。日米間の協力や友好の強化という点では理想的な骨子だった。そしてなによりもトランプ、安倍両首脳が親密な交流を誇示した点が印象的だった。
だが日本側の一部ではトランプ大統領が日本に対して強硬な要求をぶつけてくるだろうという予測があった。主要な新聞やテレビは会談の直前までトランプ大統領が安倍首相に自動車問題や為替問題で厳しい要求を突きつけてくるからその対策に覚悟せよ、と大キャンペーンをはっていたのだ。だがこの予測がみごとに空ぶりとなった。大誤報だった。トランプ大統領はそんな対日要求はまったくしなかったからだ。逆に安倍首相との異例なほどの友好を示し、日米同盟の堅持を力強く誓ったのである。
朝日新聞2月11日の朝刊第一面には「車貿易や為替 焦点」という見出しの記事が載っていた。本文の冒頭は以下のようだった。
「(日米首脳会談で)トランプ氏は自動車貿易を重要課題とする構えで、二国間の貿易協定や為替政策に言及する可能性もある。通商・金融分野をめぐり、どのようなやりとりが交わされるかが焦点となりそうだ」
朝日新聞のその前日の2月10日夕刊は、もっと明確だった。「自動車、重要議題に」という見出しの記事本文は冒頭で以下のように述べていた。
「トランプ米大統領が10日の安倍晋三首相との日米首脳会談で、自動車貿易をめぐる協議を重要議題に位置づけていることがわかった」
しかし現実の日米首脳会談では自動車問題も為替問題も出なかった。この事実は朝日新聞も日米首脳会談後の2月12日朝刊の記事ではっきりと認めていた。
「トランプ氏が問題視していた日本の自動車貿易や為替政策も取り上げられなかった」
誤報を認めたのである。
その後の4年に及ぶ日米関係でもトランプ政権が自動車や為替で日本側に抗議や要求をしたという公式記録は存在しない。
(その5につづく。その1、その2、その3。全5回)
*この記事は雑誌の「月刊 正論」2024年4月号に載った古森義久氏の論文「トランプ氏に関する誤解・歪曲を正す」の一部を書き替えての転載です。
トップ写真:G20サミット初日、ドナルド・トランプ前米大統領と安倍晋三首相(当時)2019年6月28日 大阪府大阪市 出典:Kim Kyung-Hoon - Pool/Getty Images
-
- 1
- 2
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
アメリカにとっての中国の脅威とは
Japan In-depth / 2024年5月9日 14時23分
-
国際情勢からの日本の憲法改正の必要性(下)アメリカが切望する日本の改憲
Japan In-depth / 2024年5月1日 17時0分
-
加速化する各国の「トランプ詣で」 今日の日本外交に最も重要なこととは
まいどなニュース / 2024年4月26日 18時30分
-
焦点:「トランプ2.0」に備えよ、同盟各国が陰に陽に働きかけ
ロイター / 2024年4月25日 15時33分
-
「日米蜜月」アピールと裏腹に進む「外交の新潮流」 内政に翻弄される岸田首相の「次なる外交課題」
東洋経済オンライン / 2024年4月16日 8時30分
ランキング
-
1財政検証で判明、年金「100年安心」ではなかった 公約を実現するには今後も調整が必要だ
東洋経済オンライン / 2024年5月12日 10時0分
-
2首都高湾岸線トンネル内でタクシー横転事故 運転手と乗客死亡
日テレNEWS NNN / 2024年5月12日 7時41分
-
3来春の避難指示解除目指す 飯舘村、帰還困難区域の一部
共同通信 / 2024年5月12日 15時41分
-
420代妻に馬乗り「2人がもめている」家族の通報で駆け付けた警察官の目の前で…暴行容疑で逮捕の36歳の男「間違いありません」北海道旭川市
北海道放送 / 2024年5月12日 9時47分
-
5規正法改正「抜け道が並ぶ」=野党、与党案を批判
時事通信 / 2024年5月12日 14時53分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください