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麻しん(はしか)の流行に備えるために(前編)

Japan In-depth / 2024年3月28日 12時7分

麻しん(はしか)の流行に備えるために(前編)




高橋謙造(帝京大学大学院公衆衛生学研究科教授)





【まとめ】





・世界では、麻しん(はしか)の流行が起きている。





・感染すればほぼ100%麻しんを発症してしまう。





・麻しんワクチンを接種した覚えがない人には積極的に受けることをおすすめする。





 





今、世界では、麻しん(はしか)の流行が起こっています。





「コロナみたいなことにはならないだろう。昔からある病気に騒ぎすぎだ。」という声も聞こえますが、麻しんの流行可能性に医療業界は戦々恐々としています。





麻しんが流行すると、肺炎、脳炎等の重症化や死亡例が生ずる可能性があります。決して子どもの病気ではなく、成人でも重症化、死亡例はあります。また、麻しんは感染力が強く(飛沫感染、空気感染も生じます!)、十分な隔離が出来ないと、院内で感染が拡大してしまう可能性もあります。





1.麻しんはやっかいな感染症





麻しんの発熱初期には、麻しんの診断を付けることができません。





麻しんの初期症状としては、38度程度の発熱、鼻汁、咳などの症状のみです。麻しんに特異的に現れると言われているコプリック斑という白い斑点(麻しんを疑う決め手の一つになります)も、発熱初期には出現しません。つまり、単なる風邪と診断されてしまう可能性が高いのです。そもそも麻しんの可能性を疑ってかからないと診断は付きません。疑うことができさえすれば、発熱初期でもPCR検査等で確定診断をつけることができるのですが。





2.なぜ、我々医療者が、戦々恐々とするのか?





理由は2つあります。感染拡大が容易に生じてしまう可能性と、そもそも診断がつけられない可能性です。





1つ目は、もし、一人麻しんの患者さんが受診して来た場合に、周囲に十分な免疫を持たない人が10人いたなら、そのうち9人の人が麻しんウイルスに感染します。そして、感染すればほぼ100%麻しんを発症してしまうのです。ということは、麻しん患者さん一人の受診によって、医療施設が感染源となってしまう可能性があるのです。





実際に、1999年から2001年にかけての麻しん大流行時には、院内感染した麻しんの方がたくさんいました。流行の主体が2つあって、1歳以下の児と成人にピークがありました。成人で感染して、具合が悪く受診した人が外来の待ち時間にウイルスを撒き散らし、その場にいた免疫のない児に感染させました。また、感染した児が発熱して小児科外来等を受診する結果、ここでもウイルスの伝播が生じます。当時は1歳台でもワクチン接種前の児がたくさん感染していました。また、1歳未満のそもそも接種対象になる前の児も、やはり感染していました。





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