ODA70周年を機に対中供与の大失態の反省を その3 日本の援助が軍事費財源に
Japan In-depth / 2024年3月28日 19時0分
古森義久(ジャーナリスト/麗澤大学特別教授)
「古森義久の内外透視」
【まとめ】
・日本のODAは中国に軍事費増加への財源を与えた。
・中国政府の5年単位の国家開発計画にシンクロナイズされていた。
・中国は、軍事産業の円滑な運営のための環境保護費用を日本のODAでまかなった。
では日本の対中ODA(政府開発援助)が実際に中国の軍拡にどう寄与したかを3種類のプロセスにわけて報告しよう。
第一には、日本のODAが中国に軍事費増加への財源を与えたことである。
中国政府が純粋な非軍事の経済開発に不可欠とみなす資金が多ければ、軍事費には制約が出てくる。だがその非軍事の経済開発に日本からの援助をあてれば、軍事に回せる資金は増える。ごく単純な話である。
たとえば中国の公式発表の国防費は1981年は167億元、日本円で約2600億円だった。この金額は1980年代から90年代にかけての日本の対中ODA 1年分に等しかった。だから日本のODAが中国の国防費を補っていたといえるのだ。
当時の中国政府にとっては国家開発計画の予定どおりの実行により、とにかく経済を強くすることが最優先課題だった。経済政策でこれだけは絶対に必要だとみなす額の資金が不足ならば、軍事に回そうとした独自予算も減らさざるをえない。
ところが日本からの国家開発計画への資金援助があれば、軍事費増加への余裕をみいだすことになる。当然ながらカネはカネである。
前述のように日本の対中ODAの特色のひとつは一括供与方式だった。ふつうならば1国ごと、1年ごとに調査や検討を重ねて、供与金額を決めていく。
だが全世界でも中国だけ1国には単年ごとという大枠を外し、5年とか6年分をひとまとめにして供与してきたのだ。異様な方式だった。
だから一括供与方式で決まる対中ODAの額は数年分でときには9000億円などというとてつもない巨大な数字となった。しかもその援助供与は中国政府の5年単位の国家開発計画にシンクロナイズされていた。中国の同計画の国家予算に日本のODA資金が最初から組みこまれていたのだ。中国側は5年先の財源までをすでに確保していたわけである。であれば軍事費に回す作業はより容易となる。
前述のアメリカの専門家のトリプレット氏も「カネというのはファンジブル(代替可能)」という大原則を強調していた。日本側がいくら経済開発のためだと限定して中国政府に巨額の資金を与えても、中国はその分、ゆとりの生じた資金を他の使途に回せることが自由自在にできるというのだ。
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