「裸の両王」が世界を分断する?(上)3年目に入ったロシア・ウクライナ紛争 その6
Japan In-depth / 2024年3月30日 22時29分
林信吾(作家・ジャーナリスト)
林信吾の「西方見聞録」
【まとめ】
・露大統領選、プーチン氏が史上最高の得票率(87.3%)で5度目の当選。
・プーチン氏、「終身大統領」となることも理論上は可能。
・投票最終日には、各地の投票所前で選挙の不当を訴えようとの運動も。
現職のウラジミール・プーチン氏が史上最高の得票率(87.3%)で5度目の当選。
……これが、13日から17日にかけて投票が行われた、ロシア大統領選挙の結果である。任期は6年なので、2030年までということになる。
まず、ロシアの憲法では大統領に就任できるのは2期までとされていたが、2020年7月に行われた国民投票の結果、この条文が改正され、現職もしくは大統領経験者は例外ということになった。したがって、プーチン「終身大統領」となることも理論上は可能なのだ。
投票率も公式発表によれば77.49%で、こちらもソ連邦崩壊後の大統領選挙として、史上最高を記録したという。
事前に予測された通りで、特に驚くべき結果ではないとも言えるが、ロシア政府の公式発表など、もはやプロパガンダである、ということは指摘しておきたい。
まず、前述のようにプーチン氏が大統領選挙を制したのは今次で5回目だが、実は選挙のたびに「得票率など、数字が操作されているのでは?」との疑惑が取り沙汰されてきた。
こうしたことから、選挙妨害のような行為が各地で頻発し、日本を含む西側諸国のメディアでも、投票箱の中にインクらしき黒い液体をぶちまけた女性が、警備の職員に連行される映像が流されたし、投票所に火焔瓶が投げ込まれた事例さえある。
その話題はひとまず置いて、プーチン氏以外の候補者の顔ぶれを少し見てみよう。
まず、共産党中央委員のニコライ・ハリトノフ氏。得票率4.3%(公式発表。以下同じ)。
ある年代以上のロシア人の中には、かつて「世界屈指の生産力と充実した社会保障を誇っていた」ソ連邦へのノスタルジアを抱き続けている人たちがいて、共産党は今も侮りがたい勢力なのである。
続いてリベラル派とされる「新しい人々」のウラジスラフフ・ダワンコフ第一副代表。得票率3.9%。下院副議長でもある彼は「戦争反対勢力の結集」を最後まで呼びかけていた。
そして極右政党・自由民主党のレオニド・スルツキー党首。得票率3.2%。
ちなみにプーチン大統領の所属政党は「統一ロシア」だが、名称とは裏腹に、プーチン指示だけを掲げて中道派から右翼までが集まった「寄り合い所帯」などと呼ばれている。党首はドミトリー・メドヴェージェフ国家安全保障会議副議長だ。
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