【岸田政権への提言】GDPで負けたドイツに追いつくために徹底賃上げと転職市場拡大を【日本経済をターンアラウンドする!】その21
Japan In-depth / 2024年4月1日 12時2分
西村健(NPO法人日本公共利益研究所代表)
【まとめ】
・ドイツにGDPで抜かれ、日本経済の厳しい現実を突きつけられた。
・物価高を超える徹底的な賃上げが必要になる。
・転職市場の活性化で、企業経営者が賃上げをしなければならない。
ドイツにGDPで抜かれた。まさに日本経済の厳しい現実を突きつけられた形だ。人口が3分の2の国に劣るということは、相当わが国はどこかがおかしいということだ。そのためにやるべきことは、人的資本経営に尽きる。社員が楽しく仕事ができ、やる気をもって、相互に協力し合って、仕事をしていく、そういう職場を作っていくしかないということだ。労働生産性を上げるために、無駄な作業や時間を効率化し、新規事業やイノベーションに挑戦していかなければならない。日本経済全体としては、輸出促進、産業競争力を上げていくことをもっと真剣に考えないといけない。
□ドイツに負けた原因
まず、ドイツに追い抜かれた理由は、円安要因など様々であるが、大きく3つになる。
①グローバル市場での競争力低下
②企業の改革が進まない、産業構造が固定化
③企業の行動選択
である。
①については特に国際競争力のランキングで日本企業は一気に凋落したことが示すように、世界市場を席巻した「日本製」電化製品は過去の話。価格決定権のある立場ではなく、品質がよい、そこそこ良い下請けに成り下がってしまった。②については、大企業もメンバーは相変わらず、産業構造が固定化しているといってもよいだろう。特に③は簡単なことだ。
・企業は値上げを避ける
・内部でのコストカット、特に人件費圧縮に走る、新規商品開発に力を注げない
・あまり声が大きくない労働者にしわ寄せがいく
・労働者は団結できず賃上げを要求できず
・経営者は自分たちの利益確保を優先する
デフレ下でそうなるのであった。労働組合の力が弱いため、デフレ下で、韓国・中国など製造業は追いつかれたり、追い抜かれたりする中、短期的な利益確保のため、企業はこうなるのは必然の事だろう。
なので、価格アップを許容しつつも、労働者の賃上げを図り、日本のビジネスパーソンのリスキリングをはかって、イノベーションを徹底的にすすめるしかない(所属のNPOは大阪関西万博・でそうした活動を支援)。
□ 提言1:徹底的賃上げ
賃上げの動きは大企業には広がっている。これがどこまで広がるかであろう。現在、ゼネコン各社は7%、メガバンクは3%、連合の春闘、平均賃上げ率は5.3%、連合所属の中小企業も4.42%となっていて、着実に賃上げが進んでいる。19年ぶりの水準であり、失われた30年からの脱出に向けて着実に進んでいる。とはいえ問題も2つ指摘されている。
第一に、特にロスジェネ層に対しての賃上げが不十分であることである。第一生命経済研究所によると「30代後半~50代前半のいわゆるロスジェネ世代では30年ぶりの賃上げにもかかわらずほとんど所定内給与が増えていない」(第一生命経済研究所HPより)との指摘がされている。
そして、第二に、物価高を超えてはいないこと。そうなると、物価高を超える徹底的な賃上げが必要になる。
□ 提言2:転職市場の活性化
賃上げができない企業に勤めている社員に対しては、賃上げできない企業から脱出してもらうことを促進していくべきだろう。賃上げできない、未来のない業界にいることより、未来が明るい産業に移ってもらうことである。とはいえ、転職市場は成熟していない。なので必要なのは「転職市場の活性化」である。
Indeedの調査では「転職経験率は日本59.7%に対してイギリス92.7%、アメリカは90.1%、ドイツは84.2%、韓国は75.8%で日本は最下位」である。転職することがなかなかむずかしい。そうなると、転職市場を活性化する政策を推進していくべきだろう。労働者から見ても、賃上げに応じないような企業に我慢して耐えているより、とっととやめることができる場を作ってあげないといけない。
□ 岸田政権の賃上げ政策加速へ!
「マイナス金利政策」が解除され、日本経済に光が差しつつある。岸田首相が旗を振る「賃上げ税制」(7%以上の賃上げで法人税が最大35%差し引かれる)などを展開している。こうした賃上げ税制をさらに中小企業にも波及させつつ、他方、転職市場の活性化で、企業経営者が賃上げをしなければならない。
平均賃金1500円以上、2000円を要求することだってあってもよいかもしれない。経営者はここ30年間、その力量を試されなかった。企業経営者にとって、賃上げするどうかは、踏み絵になるだろう。いわゆる「ゾンビ企業」、補助金で生きながらえる企業は退出をするしかない。それは資本主義社会のルールだからだ。強力な政権でないと賃上げのような要求を企業に求めることは難しい。その意味で、岸田政権に期待したい。
トップ写真:ベルリンの街並み(イメージ)出典:querbeet/Getty Images
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
【政界】「退陣要求」が飛び出す中で 問われる岸田首相の経済再生への〝覚悟〟
財界オンライン / 2024年7月2日 15時0分
-
お金は知っている 「ポスト岸田」の必須条件は「脱デフレ」 求められる「空白の30年」と決別、日本経済再生へかじ取りできるリーダー
zakzak by夕刊フジ / 2024年6月28日 11時0分
-
原材料価格が高止まりする中、商品値付けに悩む企業各社
財界オンライン / 2024年6月27日 18時0分
-
社説:骨太の方針 見えぬ財政健全化の道
京都新聞 / 2024年6月13日 16時5分
-
骨太方針、構造的賃上げが鍵 首相「新たなステージに歩み進める」=諮問会議
ロイター / 2024年6月11日 18時45分
ランキング
-
1大分県宇佐市の強盗殺人、死刑判決の被告側が即日控訴…裁判長「被告が犯人と優に認められる」
読売新聞 / 2024年7月2日 22時9分
-
2殺人事件発端は「ラーメンを食べる画像」なぜ…きょう勾留期限・旭川市女子高校生橋から転落殺人
STVニュース北海道 / 2024年7月3日 6時36分
-
3マンションから転落疑いの女児死亡 意識不明で救急搬送 札幌
毎日新聞 / 2024年7月2日 21時19分
-
4かすむ「ポスト岸田」上川外相 米兵事件巡る批判で「洋平さんと同じ道」
カナロコ by 神奈川新聞 / 2024年7月2日 22時17分
-
5なぜ日本のメディアでは小池百合子都知事の「荒唐無稽な噓」がまかり通るか《カイロ大「1年目は落第」なのに首席卒業》
文春オンライン / 2024年7月3日 6時0分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください