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サター氏に聞く その3 台湾有事での反中国際連帯

Japan In-depth / 2024年6月1日 11時0分

同様にアメリカ、イギリス、オーストラリア3国によるAUKASもアメリカの原子力潜水艦をオーストラリアに供与するという軍事的同盟ですが、やはり中国の太平洋での脅威増大への対処です。オーストラリア自体も数年前までとは異なり、中国を念頭に置いての軍事力強化を進めています。





東南アジアでもフィリピンやベトナムの中国への警戒や抗議からのアメリカ接近は意味があります。とくにフィリピンは南シナ海の紛争領域で中国の軍事威嚇にあい、国際的な抗議を高めています。





つい数年前まではこうしたアジアの諸国では米中対立のなかで、どちらに身を寄せるか、大きな課題でした。どちらにもとくに露骨には味方しないという国も多かった。ところがこの地政学的な構図はいまはすっか





り変わりました。中国に抗議してアメリカ側と連帯するという諸国が圧倒的に多くなったのです。





しかもアメリカに寄ってきたアジアや欧州の諸国は中国の国内統治にまで批判を表明するようになりました。共産党独裁政権による自国民や少数民族の抑圧に対して、アメリカに同調して抗議するのです。対中姿勢では人権問題などの価値観の領域にまで反中の国際連帯が形成されてきたといえるのです」





——アメリカ側のこの種の国際連帯の広がりは中国の台湾攻撃計画にも影響するでしょうね。





「その通りです。中国にとって台湾併合は国家の根幹の方針です。習近平国家主席も必要な場合、軍事力を使ってでも台湾を支配するという意向は何度も表明しています。ただしそのために払うコストも当然、計算しています。その計算では現状のような中国に批判的な国際連帯の広がりは当然、障壁となります。





まずウクライナを侵略したロシアに対する国際的な経済制裁は台湾を攻撃する中国にも当然、かけられる。習近平主席はこの点を考えるでしょう。そのうえにいまやNATOの欧州諸国までが中国の台湾攻撃には軍事的な反発を示しかねない。台湾有事にはイギリスもフランスも参加しそうです。いずれも平時に台湾海峡周辺へ軍艦を送っています。カナダまでが最近、ミサイル艦を台湾海峡近くに派遣しました。台湾有事には欧州・アジア連合が中国と対峙しかねないのです。





私は20数年前、アメリカ政府機関でもし中国が台湾を攻撃し、アメリカが軍事介入した場合、他のどの諸国が米軍側について実際の軍事行動をとるか、という推定作業をしたことがあります。その際は確実な支援国はなんとゼロだったのです。有力同盟国の日本でさえ、米軍を支援しない見通しが強いと判断しました。正直なところ、私は日本やオーストラリアが米軍の中国との戦闘に加わるかもしれないという姿勢をとることは、私の生きている間には絶対ないだろうとまで思っていました。





ところが現状をみてください。アジアと欧州の多数の諸国が参加しそうなのです。だから中国側は台湾攻撃に慎重にならざるを得ないでしょう。これがアメリカ主導の国際連帯の意味なのです。これは米中関係でのこの2年ほどの間の重大な変化です」





(その3につづく。その1、その2)





*この記事は月刊雑誌WILLの2024年6月号掲載の古森義久氏の寄稿の転載です。





トップ写真:バイデン大統領、キャンプ・デービッドで日米韓首脳会談を開催(2023年8月18日)出典:Photo by Chip Somodevilla/Getty Images      




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