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スマホ依存の危険とは

Japan In-depth / 2024年6月2日 11時0分

▽性に関する知識や体験も肉体的に適切ではない10代の早い時期から男女ともにスマホ経由で早められる。その結果、社会の規範に反する行動につながる例が多い。





ハイト教授は以上のような背景を基礎として、その結果、いまの成長期の若い男女に起きている現象について多角的に以下の報告を伝えていた。





▽人間の頭脳は思春期に最大の成長、最大の再編成を迎えるが、その成長への発展を自然に促進する動きがスマホへの没頭で妨げられて、頭脳内に構造的な変化を起こすことになる。

▽少年少女たちはスマホへの没入により自然な成長の過程で突然に、同世代の男女と遊ぶ、話す、遊ぶという行動を激減させてしまう。

▽人間の健全な成長、発展には具体的な社会活動が欠かせないが、スマホへの没頭は少年少女からその機会を奪ってしまう。その結果、少年少女の多くが現実の世界を認知しないところまでいってしまう。





以上の指摘も考えてみれば、ごく当然のように思えてくる。スマホの登場する文字もイメージもすべて仮想世界である。現実世界ではない。人間が成長するには現実世界との接触が不可欠なことは自明だといえる。その成長期の真っ最中にある若い人間が現実の世界には接することなく、仮想の世界に没入し続ければ、その成長が歪んでくることは当然だろう。





アメリカの主要メディアのなかではまず大手紙のウォールストリート・ジャーナルがこの書での警告で大きく取りあげた。同紙の看板コラムニストのペギー・ヌーナン記者が4月上旬、「私たちは子供をスマホから救えるか」という見出しの長文記事で同書の内容を紹介した。スマホの広がりの現状は若い世代の成長に重大な危機を生んでいる、ハイト教授の警告を詳しく伝えたのである。





ではどうすればよいのか。当面なにをすれば、10代の男女の成長のゆがみを減らすことができるのか。





ハイト教授はまず当面の是正策として、高校生未満のスマホの全面禁止、高校でも教育時間内のスマホの所持禁止、16歳以下のソーシャルメディアの禁止などを提案していた。





この是正策が実際にどこまで実行されるのかは疑問だが、この種のスマホ追放策が権威のある学者から打ち出されるようになったアメリカのスマホ事情は日本側でも知っておくべきだろう。なぜなら、スマホへの没入という点では、アメリカよりも日本の方がその度合いがずっと高いように思えるからだ。たとえば、ワシントンと東京の地下鉄では乗客のスマホ使用の程度が明らかに違う。東京では座っている乗客のほぼ全員がスマホをしっかりと握り、操作に没入している。ワシントンの比率は約半数といえそうだ。





東京では地下鉄に限らず、他の乗り物の内部でも駅でも街路でもスマホを握り、見つめたままの男女に満ちている。カフェでも母と娘がまったく言葉を交わさずに、それぞれ自分のスマホに没入している。報道の世界でさえも、日本のテレビでの火災や豪雨の現場報告で、現状を指し示すはずの記者が単に自分のスマホの文字を読み上げる、という光景が目立つ。スマホはいまや人間の活動に欠かせない道具ではあっても、その奴隷になってはならない、とさえ感じてしまう。









▲図 The Anxious Generation: How the Great Rewiring of Childhood Is Causing an Epidemic of Mental Illness  出典:amazon





トップ写真:スマホを見て地下鉄に乗るアジア人 出典:iStock / Getty Images Plus




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