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金正恩の「先代越え作戦」は成功するのか?(下)

Japan In-depth / 2024年6月2日 18時2分

こうした危機意識の中で、金正恩は新型コロナウィルス事態を利用して、北朝鮮社会を外部世界と遮断しようとしたが、一度流入した外部文化は金正恩の権威を蝕み、「首領絶対洗脳」の効果を弱めさせ続けたのである。





■ 若者層の意識変化を逆戻りさせることはできない





今回、金正恩が金日成を「太陽」の座からおろし、自身が太陽となるプロパガンダを始めたのは、この方法以外に自身の権威を高める術がなくなったからだと思われる。しかし、このプロパガンダは、一見、金正恩の権威を高めるように見えるが、その意図とは正反対に世襲体制の根幹を崩しているといえる。





4月20日から23日まで平壌で開催された朝鮮労働党第2回宣伝部門イルクン(幹部)講習会で、党中央委員会宣伝扇動書記の李日煥(リ・イルファン)は、「党組織と党宣伝部門の活動家が激変する現実に応じることができず、宣伝・鼓舞活動においてはっきりした改善がない」と指摘した。若者を対象にした愛国心、党や金正恩に対する忠誠心を引き出す宣伝扇動事業において、思ったような成果が得られていないということだ。





韓国統一部が去る2月6日に公開した「北朝鮮経済・社会実態認識報告書」では、金正恩の権力継承に対する否定的評価が、執権直前である2006~2010年の脱北者では36.6%だったが、金正恩が各種粛清などを通じて指導部内を固めた2016~2020年に脱北した人たちでは56.3%に達したと明らかにしている。





また北朝鮮版ロイヤルファミリーの「白頭血統」に対する反感も大きくなった。金正恩の父親である金正日時代に脱北した人では、白頭血統世襲に反対する回答者が30%前後だったが、金正恩が執権した直後である2011~2015年の脱北者では42.6%が否定的評価を出した。2016~2020年の脱北者は過半数を超える54.9%が白頭血統世襲に反対した。





北朝鮮は、「青年教養保障法」を制定し、若者に「社会主義強国建設のための突撃隊になれ」との思想教育を行っているが、当の若者は「なぜ党と首領、国のために命を捧げなければいけないのか」と反発している。





最近の韓国デイリーNK情報によると、20代(平壌在住)のAさんは、「『自分の幸せを投げ売って、国のためにきつい職場を選択する青年英雄』には表向き拍手を送るが、裏では『頭がおかしくなってあんな選択をしたんだ』、『人付き合いができないから、国のプロパガンダを信じてしまう」と語ったという。





このような現象に対して、北朝鮮の「社会主義愛国青年同盟の学習資料」は、「社会主義の信念で武装し党と祖国への忠誠心で燃えなければならない若者が、個人的な金稼ぎや経済的安定にしか関心を持たないのは、打開すべき問題」と記した。





韓国デイリーNKが、複数の北朝鮮の若者に、「人生の願い」は何かと問うたところ、「社会的成功」、「経済的安定」と答えが帰ってきたという。





(上のつづき)





トップ写真:アンガラロケット発射施設の建設現場を訪問する金正恩とプーチン大統領(2023年9月13日 ロシア・ツィオルコフスキー)出典:Contributor/Getty Images




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