日中韓「三国協力事務局(TCS)」、参加国広げることが必要
Japan In-depth / 2024年6月25日 14時19分
宮家邦彦(立命館大学 客員教授・外交政策研究所代表)
宮家邦彦の外交・安保カレンダー 2024#26
2024年6月24~30日
【まとめ】
・2024 IFTC(日中韓三国協力国際フォーラム2024)に出席した。
・TCS(三国協力事務局)について、存在することの重要性、広い意味での継続性、革新と変革の重要性を指摘した。
・3カ国の枠組みは残し、参加国も活動範囲も広げていくことが必要。
今週は、先週お約束した韓国出張の追加報告から始めよう。2024 IFTC(日中韓三国協力国際フォーラム2024)では過去25年間の「三国協力」や13年前にできたTCS(三国協力事務局)なる国際機関に関する評価と提言について喋るよう求められた。とは言っても、筆者はこの分野は素人で、一般外交的常識以上の知識はない。さて、どうしたものかと、文字通り、七転八倒した。相手はソウルにある国際機関、今の事務局長は中国の外交官だ。重要だが、意外に知られていないのも事実。しかし、実際に会場に入ってみると、聴衆には意外に多くの若者がいた。なるほど、されば「言いたいことを言おう」と、腹を決めた。スピーチの冒頭、筆者はこう語りかけた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・本日お招きいただいた日中韓三国協力事務局の皆様に感謝申し上げる。とはいえ、私は中東担当だった。真面目で、融通の利かない日本の元外務官僚であり、時間を無駄にするようなセレモニー・スピーチや、中身のないプロパガンダ提案をするつもりはない。昨年70歳を迎え、もう怖いものは何もない。また、登壇者の殆どは母国語を使っているが、今日私は敢えて英語でスピーチしたい。通訳を介さず、皆さんと直接コミュニケートしたいからだ。皆さん、どうかイヤホンを外して頂きたい・・・。
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驚いたことに多くの若い聴衆が、一斉にイヤホンを外してくれた。中には拍手までしてくれる人々もいる。なるほど、若い人々はこのTCSをめぐる問題点をそれなりに理解してくれているのだと思い、なんだか嬉しくなった。その後のスピーチについては、大した内容ではないので、要点だけご紹介する。
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今年は日中韓協力25周年にあたるが、25年前の1999年、私は北米局で日米安保課長を務めていた。1998年には金大中大統領の訪日と国会演説があった。2002年に胡錦濤国家主席が就任したとき、私は北京にいた。当時私は日中韓の協力関係の将来について楽観的だったが、残念ながら、それ以来、日中韓関係はオシロスコープのように乱高下している。もちろん、こうした変動の多くは政治的な理由によるものだ・・・・・。
TCSについて、3つの重要なポイントを挙げたい。一つ目は、とにかく存在することの重要性、つまり狭義の意味での継続性である。TCSは3カ国の信頼醸成を目的としており、その目的は十分に果たされていると思う。
第二の、そして私たちにとってより大きな課題は、広い意味での継続性、つまり毎年途切れることなく一定の活動を継続し、結果を出していくことである。
第三に、最後に、私は革新と変革の重要性を指摘したい。3カ国で協力し合うという基本的な枠組みは維持しつつ、これからは参加国も活動範囲も広げていくことを考える必要がある。・・・云々。
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先週書いた通り、ソウルでは若者の動向を皮膚感覚で知りたかったのだが、幸い限られた人数ながら20代、30代の若者と話す機会があった。彼らは、現下の厳しい経済環境に直面しても、感情に流されず、より現実的、論理的、利己的に思考・行動するという印象を受けた。詳細は今週の産経新聞WorldWatchをご一読願いたい。また、ソウル滞在中に偶々露大統領の北朝鮮国賓訪問があり、「包括的戦略パートナーシップ条約」が署名された。同条約の「相互安全保障条項」については様々な議論があるが、過大評価も過小評価も禁物、というのが筆者の見立て。詳細は今週の日経ビジネスを読んでほしい。
続いては、欧米から見た今週の世界の動きを見ていこう。今週は、米大統領選の討論会、イラン大統領選挙、フランス議会選挙がある。いずれも注目する価値があるので、忙しい週になりそうだ。
6月25日 火曜日 ロシア外相、2日間のベラルーシ訪問を終了
6月26日 水曜日 英国議会で党首討論
ホンジュラス前大統領、米国で麻薬取引容疑裁判
米州機構年次総会、 パラグアイで開催(3日間)
欧州委員会委員長、ブラッセルでスロヴァキア新大統領と会談
6月27日 木曜日 バイデン・トランプ討論会
6月28日 金曜日 イラン大統領選挙
モンゴル、議会選挙
6月29日 土曜日 モーリタニア、大統領選挙
欧州安全保障協力機構(OSCE)の議員会議が開催される
6月30日 日曜日 仏議会選挙
最後にいつもの定番のガザ・中東情勢を書いておく。先ほど、イスラエル軍参謀総長の発言が飛び込んできた。23日、ラファを視察した同参謀長はハマスの部隊に関し「解体したと言える段階に近づいている」「(戦闘員は依然残っているものの)戦闘部隊としては(4個大隊全てが)機能していない」と述べたそうだ。これに同日のネタニヤフ首相の「ラファでの激しい戦いは終わろうとしている」、ラファの後は「北に向き合うことになる」とした発言を総合すれば、以下のことが推測可能である。
ネタニヤフは11月の大統領選挙まで停戦する気などないのではないか
連立政権を壊したくないネタニヤフは政治生命を賭けて頑張るつもりのようだ
だが、イスラエル軍とネタニヤフとの関係悪化を指摘する報道もあり要注意だ
やはり「期待すると裏切られる」のが中東のようである
今週はこのくらいにしておこう。いつものとおり、この続きは今週のキヤノングローバル戦略研究所のウェブサイトに掲載する。
トップ写真:2024年5月27日、韓国・ソウルの大韓商工会議所で行われた日中韓首脳会談に出席した岸田文雄首相と韓国の尹錫烈大統領。
出典:Photo by Chung Sung-Jun/Getty Images
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