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〝一瞬のスキ〟が致命傷に 6月28日に大統領選TV討論

Japan In-depth / 2024年6月25日 19時0分

〝一瞬のスキ〟が致命傷に 6月28日に大統領選TV討論


樫山幸夫(ジャーナリスト、元産経新聞論説委員長)


 【まとめ】


・米大統領選候補者テレビ討論第1回が27日夜(日本時間28日午前)行われる。


・混乱を避けるため、相手候補の発言中はマイクの音を消すなど、異例な対応での開催。


・過去の大統領選でさまざまなドラマを生んできた真剣勝負の場、今年はどうなる?


 


■ 政治家の器量すべてが試される


 テレビ討論は丁々発止の真剣勝負の場であり、政治理念や政策はもちろん、容姿、態度挙措、質問に対して当意即妙の受け答えができるかなど、政治家としての器量、度量すべてが国民の目にさらされる。


 候補者にとっては自らの魅力をあらためて印象付ける好機だが、言動のわずかなミスが致命傷になりかねない危険もはらむ。いわば両刃というべきだろう。


 過去を見ても丁々発止の真剣勝負が展開され、ポイントを得る一方、失速した候補もおり、悲喜こもごもだ。


■ テレビ時代感じさせたケネディVSニクソン


 1960年9月26日。全米最初のテレビ討論はこの日、シカゴで行われた。


 相まみえるのはこの年の選挙で接戦を展開していた民主党のジョン・F・ケネディ上院議員と共和党のリチャード・ニクソン副大統領。それぞれ43歳、46歳、気鋭の対決だった。


 この日、ラジオだけで議論を聞いた人はニクソン氏に軍配を上げたというが、テレビを見た人の間では逆だった。


 ニクソン氏はカゼによる発熱で体調を崩していたといわれ、メーキャップをしなかったために顔色も悪く、汗をしきりに拭って疲労を色濃くにじませていた。


 氏よりさらに若く颯爽としたケネディ氏が有権者の心をとらえ、11月の投票日には僅差ながらケネディ氏が勝利したのは自然な展開だった。


 議論ではリードされながら、テレビ映りのいいケネディ氏が勝利をつかんだことは、テレビ時代の到来を感じさせた。


 それから30年余。1992年の選挙では現職のジョージ・W・H・ブッシュ大統領(共和党)が無名に近かった新人、ビル・クリントン氏(民主党、当時アーカソー州知事)に一敗地にまみれた。


 前年の湾岸戦争を勝利に導き一時は圧倒的な人気を誇った現職の敗因は、いわば〝一瞬のスキ〟だった。


 司会者からの矢継ぎ早の質問にうんざりしたのか、質問が相手候補に向かったところで、大統領が腕時計に目を落とした。テレビカメラはそのわずかな瞬間を逃さなかった。


 長時間の緊張に耐えられないのか。指導者にふさわしくないと感じた有権者も少なくなかった。


■「君はケネディじゃない」


 比較的新しいのは、2000年の選挙だ。


 アル・ゴア副大統領(民主党)は、対立候補で、テキサス州知事のジョージ・W・ブッシュ氏(先代ブッシュ大統領の長男、共和党)が発言するたびに、わざとらしく大きなため息をつくことたびたび、他人を見下す鼻もちならない人物という印象を振りまいてしまった。


 次の討論で、「その点については知事の意見に同感だ」などと謙虚なところを見せつけようとしたが、時すでに遅かった。


 この選挙は史上まれにみる激戦だった。結果をめぐって法廷闘争に持ち込まれ、12月になってようやくブッシュ氏勝利で決着がついた。後味の悪い微妙な結末だった。


 選挙結果とは直接関係がないが、筆者の印象に残っているのは88年、民主党のロイド・ベンッェン上院議員と共和党のダン・クエール上院議員による副大統領候補同士の論争だ。


 俳優のロバート・レッドフォードばりのハンサムな容姿で人気のあったクエール氏が自らをケネディ氏になぞらえたところ、ベンッェン氏が毒づいた。


 「私はケネディの友人だった。かれは素晴らしい大統領だった。君はケネディじゃない」


 クエール氏は「余計なお世話だ」などと反発して見せるのが精いっぱいだったが、氏がこの時、「いや、私のほうがかっこいいという人もいるよ」などと機知にとんだ受け答えをしていたら、男をあげたかもしれない。


■ マイク消音、無観客で罵倒合戦避ける


 バイデン、トランプ両氏による27日のテレビ討論の舞台、ジョージアは激戦州スウィング・ステートのひとつだ。


 現職バイデン氏は先週末、ワシントン郊外、キャンプ・デービッドの大統領山荘にこもって側近相手に入念な準備に費やした。トランプ氏はいつものように各地を遊説、有権者と政策論議を交わしたという。


 過去のテレビ討論は候補者が夏の党大会で正式に決まり、副大統領候補も指名されたあとの9月以降投票日まで3回、副大統領候補同士の討論も1回行われるのが常だった。


 ことしはそれが大幅に前倒しされ、開催回数も今回のほか9月と、計2回の開催にとどめることになった。


 郵送による投票が、州によっては10月中旬に締め切られるため、その前に有権者に判断材料を与えようという配慮のようだ。


 どちらかの候補に不利な状況で終わった場合でも、11月の本選挙までに間があるために影響を少なく抑えられるという判断のあったのではないかという(BBCニュース ジャパン)。


 運営上、通常と異なるのは、静かな雰囲気を確保するため観客を入れないこと、司会者に質問された候補者が答えている間、相手のマイクは音声が入らないように消音されることなどだ。


 同じ顔ぶれで行われた前回2020年の討論では双方がエキサイトし、互いに発言を遮るなどほとんど罵倒合戦、収拾不能になりかけたことがたびたびあったため、今回はそれを避けるため苦肉の策がとられた。


 「互いに侮辱しあうだけの子供じみた内容」(ニューヨーク・タイムズ紙)に終始した前回の再来だったなら、アメリカ国民だけでなく全世界を失望させるだろう。 


 最新の各世論調査ではトランプ氏が1,2%から数%リードという接戦が続いている。


 「まだ投票する候補者を決めていない」という有権者も10%近くおり、両氏の舌戦がこれらの人たちの心をどうつまむかが大きな焦点だ。


トップ写真:1960年テレビ討論中の大統領候補リチャード・ニクソン(左、後の第37代大統領)とジョン・F・ケネディ(第35代大統領)


出典:Photo by MPI/Getty Images


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