「トランプ陣営の世界戦略がさらに明るみに」その3 中国こそが最大の脅威
Japan In-depth / 2024年6月27日 11時0分
トランプ政権は発足当初からイラクやシリアを拠点としたイスラム原理派テロ組織『イスラム国』(IS)の壊滅を宣言していた。この組織がアメリカとの闘争を宣言して、実際にアメリカ国民の生命を奪っていたからだった。そしてトランプ政権は実際に米軍を投入して、ISの本部までを掃討し、その組織を破壊した。
このいずれの場合の軍事力行使も明確な原因と目的とを宣言し、条件をつけての選別的な軍事行動だった。第二次トランプ政権でも軍事力行使に関してはこの種の選別的、限定的な原則が保たれる」
要するに軍事力は必要とみなした場合には断固として行使するが、あくまで明確な条件を最初からつける、というのである。「無期限、不必要な戦争には巻き込まれない」という趣旨だった。
【中国を最大脅威とみなす】
この報告書の最大焦点ともいえるのは中国に対する深刻な脅威の認識だった。トランプ陣営の対外政策ではいまのアメリカにとっての最大の脅威は中国であり、米側はその脅威に対処することが切迫した責務だと警鐘を鳴らすのだ。
この中国への警戒は同政策報告書の第6章に詳述されていた。「共産主義・中国―アメリカ第一安全保障政策にとっての最大の脅威、そして総合的なチャレンジ」と題された章である。そのなかではアメリカに対する中国の挑戦、対決、侵食などが総合的に描かれ、米側の対応策や反撃策が記されていた。
この章の著者は中国研究のベテランで歴代共和党政権の高官ともなってきたスティーブン・エイツ氏と若手アジア研究者のアダム・サビット氏である。アメリカ第一政策研究所ではエイツ氏が中国政策部長、サビット氏がその補佐を務める。
報告書は中国についての総合的な位置づけをまず述べていた。
「中国共産党はアメリカの国家安全保障にとって30年以上前のソ連の崩壊以来、最も総合的な脅威を突きつけるにいたった。その中国とソ連の本質的な違いは中国共産党の方が経済的にも文化的にもずっと強く、しかもアメリカ国民の生活のほぼすべての側面に入り込んできてしまった、という点である
中国の巨大な軍事力の出現は海軍、空軍、核戦力の拡大で明確であり、台湾を軍事侵攻の姿勢で脅し、近隣諸国をも威嚇して、東アジア全体での広大な地域、水域の制覇を誇示するにいたった。この中国の軍事や経済の急速な拡大は過去40年間、そのほとんどがアメリカ側の経済や軍事の発展からの収奪に依存してきた。
中国のその米側の軍事や産業の戦略的な分野への侵入はほとんどがアメリカ側の消極性、さらには政治や経済のリーダーたちの認識や想像の不足によって達成されてきた」
(その4につづく。その1,その2)
*この記事は総合雑誌「月刊 正論」2024年7月号に掲載された古森義久氏の論文「トランプ陣営の『世界戦略』を知る」の転載です。
トップ写真:中国・北京の人民大会堂で行われた歓迎式典で、儀仗兵を閲兵する中国の習近平国家主席(左)とポーランドのアンドレイ・ドゥダ大統領。2024年6月24日。
出典:Photo by Pedro Pardo - Pool/Getty Images
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