アメリカ大統領選討論会が選挙の流れを変えた
Japan In-depth / 2024年7月1日 9時35分
古森義久(ジャーナリスト/麗澤大学特別教授)
「古森義久の内外透視」
【まとめ】
・2024年6月、アメリカ大統領選討論会が実施され、バイデン大統領の認知の衰えが露呈した。
・それを受け、民主党内では他の候補者を立てるべきという意見が広がっている。
・メディアもバイデン氏の認知能力の低下を認め、本番選挙の流れを一変する歴史的な討論会となった。
アメリカ大統領選でのバイデン、トランプ両候補の討論はバイデン現大統領の認知能力の衰えをみせつけた。日本の主要メディアもついにバイデン氏の「高齢不安」が今回の討論会での敗北要因であり、同氏の大統領としての資格をも疑わせたことを認めた。だが現実には同氏の欠陥は「高齢」ではなく「認知」なのだ。つまり大統領としての統治の資格に欠けているのではないか、ということだ。
その結果、民主党側では、11月の本番選挙ではバイデン氏では勝てないことが明白だとして、交替の候補を立てるべきだという意見が広がってきた。手続きとしてはバイデン氏は現職の大統領として今回の選挙の予備選ではすでに、民主党の候補指名に必要な各州代議員の賛成票を確実にしているため、その交替はきわめて難しい。本人が自ら降りる以外に交代の道はない。
そのバイデン氏本人は7月1日現在、選挙戦から撤退する意思はない、と言明している。しかし民主党内のバイデン降ろしの動きの存在も確実である。アメリカ大統領選挙はここへきてその流れを大きく変えたこともまた確実だといえる。
現職のジョセフ・バイデン大統領と前職のドナルド・トランプ前大統領との一対一の討論会は6月27日(現地時間)ジョージア州のアトランタ市で開かれた。90分に及ぶ論戦だった。主催はトランプ氏への批判を鮮明にしてきたテレビ局のCNNだった。だからトランプ陣営はこの討論会は司会者のCNN記者2人がかねてのトランプ批判の先鋒だったことを指摘し、「3対1の論戦だから、そもそも不公正だ」とも苦情を述べてきた。
だがこんなトランプ陣営の懸念もバイデン氏の不調きわまる言辞や挙動により、一掃される形となった。バイデン氏は討論の当初から声が弱々しく、動作も緩慢、明らかに活力に欠けていた。答弁でも、数字を間違え、テーマを勘違い、言葉に詰まる、という場面があいついだ。視聴していて苦痛になるほどのバイデン氏の衰えは同氏を支援する民主党側の識者たちからも、いっせいに指摘された。
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