1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 社会
  4. 社会

「戦争経済に突入した世界で日本はどう生きる」その1 トランプ再選で日本経済に復活の波

Japan In-depth / 2024年7月31日 13時14分

「戦争経済に突入した世界で日本はどう生きる」その1 トランプ再選で日本経済に復活の波


【まとめ】


・世界経済はグローバル経済から戦争経済に大きくシフトチェンジしており、トランプ再選はその動きを加速させる。


・日本はこの世界経済の転換の中で新たな繁栄のチャンスを掴む。


・米国防総省が目をつけたのは太平洋の彼方にある日本の造船業能力。


 


 トランプ氏が米国ペンシルバニア州の集会で20歳の青年に銃撃され、米国の大統領に再選される可能性が高まった。


 「もしトラ」が「ほぼトラ」になる中、世界の経済はどう変わるのだろうか。その疑問に明快に回答したのが本書である(『「戦争経済」に突入した世界で日本はどう生きる』 (森本敏元防衛大臣推薦:著者国谷省吾、徳間書店)だ。


 本書の立場は明快である。


 世界の経済はグローバル経済から戦争経済に大きくシフトチェンジしており、トランプ再選はその動きをさらに加速すると本書では大胆に予測する。


 そして日本はこの大きな世界経済の転換の中で新たな繁栄のチャンスを掴むとみている。最近の劇的な円安も日経平均高騰の理由もこの文脈の中で解明される。類書にはない新しい視点を提供しており、読者は「新トランプ時代」を見通す新たな視座を提供している。


 面白いことに、世界でトランプ再選を恐れる勢力は山ほどある。バイデン民主党政権だけでなく、バイデンに盲従した日本の岸田政権をはじめ、中国の習近平政権など枚挙にいとまがない。


 しかし、本書が指摘するのは、トランプ再選を一番恐れているのは岸田政権や習近平政権ばかりではない。なんと足元の米国防総省(ペンタゴン)なのだという驚くべき洞察だ。


 実は米国防総省内で「ほぼトラ」対策が高速度で始まっているという。米国防産業に詳しい著者ならではの指摘だ。というのも、トランプ政権時代に米国防総省はさまざまな課題をトランプ大統領から突き付けられた苦い教訓があると本書は明らかにする。


 ジェームズ・マチス、マーク・エスパーなど歴代国防長官が課題の実現に抵抗したものの、トランプ大統領によって次々に解任された。しかもその「トランプの宿題」はバイデン政権時代に何一つ果たされることなく、残されたままだという。国防総省はその宿題を急いで果たすことを迫られているというわけだ。


 「その宿題」の一つが米国の力の象徴である「大海軍」の建設であり、多くの「空母」の誕生だ。本書が注目するのはトランプ氏が根っからの「大海軍主義者」であるということだ。具体的に米海軍全盛期時代の「空母15隻(現在11隻)」と、「艦艇600隻(同約300隻)」体制構築をトランプ陣営周辺は標榜しているという。


 しかし、肝心の米国の造船業は今や衰退の一歩をたどっていることは知られていない。クリントン、オバマの軍縮時代に造船の技術者は高齢化し資金不足が深刻化し、造船所も相次いで閉鎖に追い込まれている。こうした状況下、米国の造船能力は中国のはるか後塵を拝し、最新空母「ジョン・F・ケネディ」の建造も熟練工不足などにより予定より5年も延期されたままだ。この衰退した米造船業界でどうしてトランプ氏の望む「大海軍」が再建されるというのだろうか。しかも世界最大の造船能力を誇る海運大国中国を前にして。


 ここで米国防総省が目をつけたのは太平洋の彼方にある日本の造船業能力だ。今は閑古鳥の鳴く状態かもしれないが、その造船能力は世界最高水準にある。これを活かさない手はない。同盟国の豊富な製造能力を米海軍の再建に活用できれば中国に対抗できる大海軍が建設できる。しかもコストは安くセキユリティクリアランスの法整備も進み技術協力に展望も開けてきた。つまり、米海軍の不足した軍艦の建艦能力を日本の造船能力によって支える日米新時代がやってくると本書は予測する。


 ヒントはトランプ大統領が2019年5月28日に安倍晋三首相とともに横須賀に停泊する日本の空母「かが」に乗り込んだことにある。ここでトランプ大統領は米国に一部抵抗のあった日本の空母保有計画を後押しし、「この護衛艦(かが)が空母に改造され日米の新しい脅威に立ち向かえるようになる」と歴史的な演説を行った。日本の空母改造計画を米国の大統領が太鼓判を押し、これが海上自衛隊の悲願だった日本の空母保有計画に米国が協力する発火剤となったと本書は指摘する。そして日本に空母建造技術が蓄積さされれば、米海軍にも活用するチャンスは訪れると見通すのだ。


 すでにその前兆はあると本書は指摘する。


 それは米国のラーム・エマニュエル駐日大使が懸命に取り組んだ米第七艦隊の大規模補修(オーバーホール)を日本の造船業界に発注する画期的な軍需転換の動きだ。米国の造船業界の反対が強かったが、米造船業の衰退を背景に業界を説得し対日発注こぎつけることができた。本書が冒頭で紹介する「中露同時戦争」に米国が備えるために日本など同盟国の製造能力の活用を米議会が超党派で呼びかけたことも大きい。これが造船業ばかりではなく、日本の全産業の動員命令になるというわけだ。


 トランプ復権は確実に近づく。何度も国防長官を解任させた魔王の登場に米国防総省はどう動くのか。その秘策が実は日本の経済を再生させる原動力になると本書は予測しており、傾聴に値するだろう。


(その2につづく。全3回)



図)『「戦争経済」に突入した世界で日本はどう生きる』 (著者国谷省吾、徳間書店


出典)徳間書店


 



【佐藤克己】プロフィール


1954年東京都生まれ。日本大学法学部法律学科卒業、証券系新聞社に入社。デスク、企業調査部長に就任後、老舗出版社実業之日本社に転職。月刊投資相談編集長、第二出版部長を歴任。定年退職後、独立して編集プロダクション「喝望舎」を設立。経済、政治、文化分野の出版を手掛ける。


トップ写真:ミネソタ州セントクラウドのハーブ・ブルックス・ナショナル・ホッケー・センターでの集会で演説する米共和党大統領候補。2024年7月27日。


出典:Photo by Stephen Maturen/Getty Images


この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください