日中関係の再考 その3 両国の類似とは
Japan In-depth / 2024年8月6日 12時41分
第4は協力の歴史である。
中国で清朝が終末に近づき、国民党が近代国家へと進むために断行した辛亥革命では、その指導者の孫文らを日本側が支援した。当時の中国の若者たちの間では日本への留学を求める傾向も強かった。
第二次大戦後も日本側は日中友好という大標語の下に、さまざまな協力の手を中国側に差し伸べた。ODA(政府開発援助)という名の巨額の経済援助はその最大例だった。日本側ではいまも日中友好議員連盟など7つの対中友好団体が存在し、活動している。
第5は経済の互恵関係である。
日本と中国とは近年、経済の絆を大幅に発展させてきた。現在の日中関係では共通の部分という場合、この経済関係こそ最大の要素だといえよう。
日本にとって中国はアメリカと並んで長年、最大の貿易相手である。14億人という人口の巨大市場が隣国に存在する事実は日本の輸出企業にとって魅力であることはいうまでもない。同時に日本の企業が中国領内に生産拠点を築くという直接投資も日本と中国の両方の経済発展に貢献してきた。日本側も中国からの輸入品に依存しなければ機能できないという分野も少なくない。
以上のような共通項のために、日本には2024年現在で80数万人の中国人の長期滞在者が存在する。日本の在留外国人総計340万人のなかでも中国人は最多数なのだ。その大多数は実際の永住とみてよいだろう。
他方、中国の国内にも約10万人の日本人が滞在している。大多数が企業の駐在員や留学生で、永住という事例はきわめて少ない。それでもなおこれだけ多数の日本国民が常時、中国に滞在している事実は日中両国の絆の結果だといえよう。
現在の日中関係について、この連載ではまず両国間の摩擦や対立という側面の具体的事例に光を当ててきた。日本側からみて中国側からの一方的ともいえる敵対的な言動は、明らかにいまの両国関係では最大の懸念の対象なのだ。
しかし、それでもなお日中両国間にはこの回で紹介した類似点や共通項が存在するのである。だからこそ、日中関係の健全な保持というのは難しいともいえる。類似が相違と錯綜して複雑多岐な関係を生みだしているからである。
(その4につづく。その1、その2)
トップ写真:紫禁城 出典:wenpu wang/ Getty Images
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