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日中関係の再考 その4 両国の相違

Japan In-depth / 2024年8月9日 11時0分

 第4は、安全保障政策の違いである。


 日本は自国の安全保障をアメリカとの同盟関係にゆだねる。中国はその日米同盟には反対である。日ごろその反対を喧伝こそしないが、日本がアメリカとの同盟を強化する措置には激しく反対する。たとえば日米共同のミサイル防衛網とか、一連の日米合同の軍事演習などに対してである。しかも中国の基本安保政策では、米軍の東アジアからの撤退要求が明白な柱となっている。


 他方、日本は中国の安保政策には懸念を表明しても、具体的に反対を述べることはない。そもそも日本には憲法9条に由来する戦力保持の禁止があって、中国を攻撃できる兵器をみずからに禁じてきた。中国側は対照的に日本全土を射程に納めるミサイル類を数百の単位で保持している。


 第5は、領土をめぐる争いである。


 すでに述べたように中国は日本固有の領土の尖閣諸島を中国領土だと主張して、軍事力を使ってでも占拠しようとする構えをとっている。現実にその前段のように武装艦艇による日本側の海域への侵入をほぼ恒常的に続けている。まさに国際秩序を軍事力で変えようとする動きである。


 他方、日本政府は尖閣諸島が日本固有の領土であることはあまりに明白だとして、中国側の主張を排し、「尖閣諸島に関する領土紛争は存在しない」という姿勢をとっている。だが、中国側が実力行使の形でこの日本側の主張にチャレンジするという現状は、いつ軍事衝突が起きても不思議はない、という危険な状況を生み出している。


 以上、日中両国の相違点、対立点をさらりと俯瞰しただけでも、両国間には国家のあり方の基幹に関する巨大な断層が存在するのだ。それらの相違点の特徴はほぼすべて中国側が日本側の現状に反対し、その変革を求めているという構図である。


 つまり、中国は日本のいまある姿が気に入らないのだ。その日本の現状を中国側の求める形へと変えようとしているのである。だから日中関係の基本は「攻守」だともいえる。中国が日本の現状を変えようとして攻める。日本は現状を保とうとして、守る。こんな全体の構図なのである。


 その基本構図は日本と中国との関係では予見しうる将来、対立が絶えないという厳しい展望を示すといえる。日本側がいくら「日中友好」とか「戦略的互恵関係」という標語の下に中国との目前の対立点で譲歩や妥協に努めても、それは大きな森のなかの個別の木、というよりも、枝葉の調整にすぎないのだ。この全体図を認識しない場合、日本側の中国への姿勢はまさに「木をみて、森をみず」ということになる。狭窄の認識というわけである。


(その5につづく。その1,その2,その3)


トップ写真:二国間首脳会議で習近平国家主席とプーチン大統領が挨拶する様子(2024年7月3日、カザフスタン・アスタナ)


出典:Photo by Contributor/Getty Images


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