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オレンジキッズケアラボのコミュニティと専門性が作るゼロイチ体験

Japan In-depth / 2024年9月5日 23時46分

ケアラボを始めた頃、戸泉さんは福祉分野の第一人者から「歩行も難しければコミュニケーションも難しい、さらには医療的な処置も常時必要としている。そういう意味では、普通から一番離れた外側にいる子どもたち。でもその一番外側に線を引きなさい」と言葉をかけられたそうだ。「一番外側に線を引くというのはつまり線を引かないということ。線を引かないと決めてしまったのは楽でした。全て受け入れるということが決まった上でどう実現できるかだけに集中できたから」(戸泉さん)と振り返る。





話を冒頭に戻そう。海水浴に行くシーラボが始まったきっかけは、ケアラボに通うケア児の家族が海の家を運営していたことだった。ケアラボからの帰りがけにお母さんが「毎年家族で海の家に行くけど、この子は呼吸器もあってなかなか行けないから」と話したことでケアラボのスタッフに火がついた。「医療的ケア児だから行けないと決めつけるのはおかしい。」そこでケアラボのスタッフが付き添いでそのケア児の海水浴に同行した。以降、それが定期的なイベントとなって他のケア児と家族も参加するようになった。私が参加した今年は12人のケア児とその家族が参加し、そのうち3人はオレンジの施設「ほっちのロッヂ」がある軽井沢からの参加者だった。





http://expres.umin.jp/mric/mric_24167-2.pdf





興味深いのは、福井からの参加者の一人のお母さんが、「自分は海の匂いが苦手で、家族で行こうという考えはなかった。でもケアラボでのイベントがあったから参加することにした。」と話してくれたことだった。福井県は海に面しているが、「海に接しているため特別感や憧れはないが、それほど近くもない」(オレンジスタッフ)ためか、福井県は「海への愛着スコア」で海あり県としては最下位の44位だった(1)。そして海に遊びに行く習慣があるかどうかは家族ごとに全く異なる。





つまり、ケアラボというコミュニティの中に海の家に関わる人がいたからこそ、多くのケア児とその家族が海水浴の体験をできたと言える。その点、20年以上ぶりに海水浴場に足を運んだ筆者もその恩恵を受けた一人だ。





筆者は、2019年にケアラボが主催した全国8組の医療的ケア児とその家族がディズニーランドに行くイベント・「医療的ケア児とディズニーに行こう」の参加者にインタビューを実施した(2)。その際、「他者に頼ってもいいという感覚が得られた」と答えた保護者が多かったのが印象的だった。医療的ケア児の保護者の社会的孤立感は海外の論文でも議論されている(3)が、こうしたイベントを通じて、他者への信頼感を高めることで孤立感の改善につながる可能性もある。ケアラボでは年々イベントが増え、今年は海水浴、夏祭り、夜のイベント、気球搭乗体験、キャンプ、卒園旅行…と目白推しだ。そして「イベントへの参加率は非常に高い」という。ケアラボがコミュニティとして重要な役割を果たしていることが窺える。





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