【自民党総裁選挙】1 茂木敏充氏「政策分析」と「人事評価」
Japan In-depth / 2024年9月17日 10時29分
第二に、日本経済の再生を明確に打ち出していること。増税はしないという劇薬を提示したのだが、防衛増税、子育て増税は停止すると明言。幹事長として支えた岸田政権での目玉政策でさえ、なしにしてしまう。そして、生産性のアップを最優先目標にかかげ、実質賃金プラスを定着させることも強調している。財源にしても、「様々な工夫がある」と語る。185兆円の外為特会などの具体策も提示している。経済の専門性、現実さと説得性が特徴である。「結果を出す」というその「覚悟」、日米貿易交渉や環太平洋経済連携協定交渉をまとめてきた経験、「タフネゴシエーター」とトランプさんから言われただけあってその自信も見え隠れする。
第三に、「脱炭素、地域活性化の両面からグリーン・トランスフォーメーションを加速していきます」というようにGXを強調している。「新しい経済の生態系を循環させる鍵を握るのが新たなエネルギー供給手法としてのGX」といった問題意識を示してきたし、「GX経済移行債が10年150兆円で十分か考える必要がある」と政策としてもGXに前向きな発言が出てくる。「GX2040ビジョン」策定、エネルギー基本計画や地球温暖化対策計画に向けて党の政策をリードしてきたことなどがうかがえる。
課題は、目玉のハローワーク。解雇規制の前にまずは雇用の流動化が必要とも語る中、ハローワークについての政策を提案している。ハローワークを独立させ、職業選択支援庁にするという内容だ。
ここで思う。ハローワークと人材紹介ビジネスの実情を見ているのだろうか。ハローワークにいけば特定の仕事ばかりになっていて、企業にとっては活用できない、失業者にとってもやりたい仕事も少ないのが現状である。マッチング機能を有する民間人材サービスが拡大している中、ハローワークの役割をどう再設定するのか。特定の失業者に限定する、スキルが低い弱者に限定するなどのほうがよいのではないかと思う。なので、そもそも民業との役割分担を仕分けして、失業者のリスキリングや訓練の拡大・支援の改善することが先で、「職業選択庁」という大げさなことではないと思える。
◆人事評価
筆者は人事評価の専門家として「政治家の人事評価」などを提起してきた。ここで、「首相の人事評価」を考えたい。総理大臣の「能力」「成果が出せる行動特性(コンピテンシー)」は以下になる。
◆1.未来の方向性を示せる、共有できる
◆2.組織マネジメントができる
◆3.決断・意思決定ができる
これをしっかりできれば十分なのだが、茂木さんをこの視点を細かく見ると以下のようになる。
質問に即座に回答、知識を得て学習、知能が高く、タフな交渉などとっても優秀で、優秀さえゆえに他人に厳しい、そのため人望がやや弱い(そうだ)。カメラアイとも言われる視野に入った対象を瞬時に覚える「映像記憶」能力を持つともされている。世界のリーダーの中では圧倒的に頭が良すぎる首相になるのかもしれない。
「私の目指す新しい政権の姿は、目標を掲げ、チームを束ね、結果を出す。改革マインドと結果を出せるベストチームをつくって、成長と改革の結果にコミットする」と語る茂木さんに期待したい。
トップ写真:日本記者クラブで自身の政策を掲げる茂木敏充氏(2024年9月12日、東京)
出典:Photo by Takashi Aoyama/Getty Images
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