トランプ氏暗殺未遂と民主党側の攻撃言語
Japan In-depth / 2024年9月18日 18時0分
ラウス容疑者は民主党支持者で自分の車にも「バイデン・ハリス」と表記したスティッカーを貼っていた。過去にはウクライナに入国して、ロシアの侵略に対抗するウクライナ軍への支援をアフガニスタン、イスラエルなど他の諸国から志願兵を集めて進める運動にもかかわっていた。
警察当局の発表によると、ラウス容疑者は自分のSNSなどで、「トランプはアメリカの敵」「民主主義の脅威」などというトランプ氏憎悪の書き込みを続けていた。この種の書き込みは今回の大統領選でトランプ氏を敵視する民主党のハリス・ウォルツ陣営が流すスローガンと一致していたという。
民主党側では7月上旬にバイデン大統領が大統領選挙での競合に関して「トランプ氏を標的の中心に据えるべきだ」と述べて、論議を呼んだ。標的(ブルズ・アイ)というのは射撃での的の中心を指し、この言葉自体が実際の狙撃を連想させたからだ。その後の7月13日にトランプ氏に対する最初の暗殺未遂事件が起きた。バイデン大統領はその直後に「私が標的という言葉を使ったのはまちがいだった」と述べ、その言明を撤回した。
民主党側はこの最初の暗殺未遂事件に対して、バイデン、ハリス正副大統領も非難の声明を出し、「アメリカでは一切の政治暴力を排する」と強調した。同時にトランプ氏に対する激しい糾弾や攻撃の言葉もやや軟化させ、政治暴力の温床となる憎悪や激怒を煽ることは避ける、とも言明していた。ところが民主党全体としては7月21日にバイデン大統領の選挙戦からの撤退が表明され、後継にハリス副大統領が決まると、トランプ氏攻撃の言葉をまた激烈にしていった。
民主党側ではハリス候補自身はトランプ氏に対する糾弾は「アメリカの敵」「民主主義への脅威」「独裁者」という範囲だった。しかしハリス陣営の他の活動家たちはもっと激しい言葉の攻撃を浴びせ、トランプ氏を「アメリカへの危険」「ヒトラー」などと呼びようになった。とくにニューヨーク州選出の民主党リベラル系のダニエル・ゴールドマン下院議員はトランプ氏に対して「消されなければならない」と公開の場で述べていたことが問題となった。同議員はトランプ氏への第二の暗殺未遂が発覚した後、この発言を取り消した。
また2016年の大統領選でトランプ氏と対決して敗れたヒラリー・クリントン元国務長官はトランプ氏への第二の暗殺未遂の直後、改めて「トランプはデマゴーグとしてアメリカにとって、そして世界にとっての危険だ」と断言して、波紋を広げた。「アメリカや世界にとっての危険」となれば、いかにもその除去が必要だと示唆していると受け止められたからだ。
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