アメリカは中国との絆を切る
Japan In-depth / 2024年9月22日 23時0分
さてこの中国特別委員会の活動としては、日本にも参考となる興味を惹く実例が最近あった。この委員会が主導して、アメリカと中国のいずれも著名な工科大学の提携プログラムを終了させてしまったのだ。米中の年来の多様な絆がどんどん断たれていく実例として注目される。日本でも中国の大学と多様な提携をしている大学や研究機関が多いからである。
この下院中国特別委員会は9月上旬、「ジョージア工科大学(GIT)が中国の天津大学との年来の研究・学習の共同プログラムを打ち切った」と発表した。見方によっては大きな驚きのニュースだった。この両大学はいずれも知名度の高い名門だったからだ。
GITといえばアメリカ全体でも有数の州立の理工系大学で国際的な評価も高い。天津大学も古い国立大学で、理工の研究で有名である。両大学はオバマ政権時代の2016年に共同研究作業を始めていたが、そのプログラムをいま止めるというのだ。
この決定自体はもちろんジョージア工科大学が当事者として決めた措置ではあった。だがその前提は下院の中国特別委員会による主導だった。同委員会は米中両国間の官民の多様なつながり、提携などをアメリカの国家安全保障に有害か否か、という観点から広範に点検してきた。学術機関や大学についてもその点検の視線を厳しく向けてきた。とくに米側の機関の提携相手が中国の人民解放軍とつながりがあるか否かを調査してきた。今年春からの同委員会の優先調査事項だった。
その委員会の調査で天津大学は中国の人民解放軍と年来、軍事技術の研究や開発に関して密接な絆があると判定されたのだった。GITと天津大学は半導体の新型の開発などを共同で進めていたという。この中国軍との結びつきは結局は米側の安全保障面での国益を侵害しうるとの判断からの提携の中止の勧告になったわけだ。
米中間のこの種の提携や協力の中止は実はバイデン政権下では珍しくない。その中止の実務には下院のこの委員会が先頭に立つことが多い。アメリカ側の中国に対する警戒はここまできているのだ。米側のこの種の課題の議論では中国をアメリカにとっての「敵性国家」と呼ぶことも普通となってきた。
最近の中国の官民の日本に対する動向をみると、日本側もついに同様の対中認識が必要になったのかもしれない。
トップ写真:米国サイバー軍司令官ポール・ナカソネ陸軍大将、国土安全保障省サイバーセキュリティおよびインフラセキュリティ局ジェン・イースタリー局長、FBI クリストファー・レイ長官、国家サイバー局長室ハリー・コーカー・ジュニア局長が、国会議事堂で、下院 中国特別委員会で証言する(2024年1月31 日 ワシントンDC)出典:Kevin Dietsch/Getty Images
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