カマラ・ハリス候補はカメレオン政治家か その3 副大統領としての最低人気
Japan In-depth / 2024年10月2日 23時0分
だがバイデン大統領への留保が錯綜する限り、民主党支持層でのその反発が一枚の岩盤にはなりにくかった。だがいまやその障害は取り除かれたのだ。
第三には民主党支援の大手メディアのハリス持ち上げ大キャンペーンだった。年来、アメリカの国政、とくに選挙では主要メディアの多数派は民主党を正面、側面から徹底して支援する。たとえばニューヨーク・タイムズ、ワシントン・ポスト、CNNテレビなどが筆頭だ。地上波のCBSなど三大ネットワークも民主党傾斜である。今回はそれらのメディアがハリス氏を天まで昇れ、という調子で礼賛したのだ。たとえばニューヨーク・タイムズ8月10日のニュース記事は次のような見出しだった。
「ハリスは喜びを生み、トランプ構想の陰気さと対照を描く」
「喜び」と「陰気」と、ニュース報道とは思えない主観的、かつ情緒的な言葉である。こんな歯の浮くようなハリス礼賛の「報道」の洪水となったのだ。この偏向報道はこれまでのハリス副大統領の無視、あるいは見下しとはまったくの逆転だった。
しかし先述のようにハリス氏の政治家としての資質や政策についての疑問もまた山積している。同氏は民主党指名候補になって以降の一か月近くの間、記者会見やインタビューに再三の要望にもかかわらず、まったく応じていなかった。いまのハリス氏の立場をみれば、この対応は異様である。同氏を擁護するニューヨーク・タイムズでさえも「ハリス氏の記者会見もインタビューもないのはなぜか」という批判をにじませた記事を載せた。
その理由は本人がプロンプターに準備された草稿がないと意味不明の発言に走るという懸念からだとされる。側近が厳重な発言管理をしているのだ。もちろんハリス氏は8月19日からの民主党全国大会で公式に大統領選候補としての指名を受け、その受諾演説で政策などを発表する。だがその発言はすべて事前に準備されるわけである。
しかしハリス氏は再三の圧力に屈するような形で9月10日にはトランプ氏との1対1の討論会に応じた。ABCテレビ主催の会場には聴衆を入れない屋内の討論会だった。90分にわたるこの討論ではハリス氏は意外の善戦ぶりをみせた。ABCの司会者2人が明らかにハリス氏支持で、トランプの答弁には厳しく「事実点検」の指摘を突きつけたのに対し、ハリス氏には肝心の質問への答えも示さなくても、そのまま許容するという偏向姿勢だった。
しかし全体としてハリスがこの討論会では勝者となったとする世論調査結果が多かった。もっともトランプ氏自身はトランプ陣営はその判定をまったく受け入れず、ハリス氏が最重要な質問には答えなかった、と批判した。
(その4につづく。その1、その2)
*この記事は雑誌「月刊 正論」2024年10月号に掲載された古森義久氏の論文を一部、書き直して転載しました。
トップ写真:演説をするハリス候補(2024年9月29日ネバダ州ラスベガス)出典:Mario Tama/Getty Images
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