カマラ・ハリス候補はカメレオン政治家か その4(最終回)くるくる変わる政策
Japan In-depth / 2024年10月3日 11時0分
ハリス氏はまして日本への政策に関与したこともない。日本の政界との接触も皆無に等しい。アメリカ側の民主、共和両党に共通する対日政策での日米同盟堅持という基本こそ守るだろうが、実際の具体的な政策となると、白紙の状態となる。だから日本側では万が一のハリス政権誕生にも備えて、事前の調査や準備は進めておくべきだろう。
ハリス氏が大統領選での副大統領候補に選んだミネソタ州知事のティム・ウォルズ氏をも紹介しておこう。
ウォルズ氏は2019年から中西部ミネソタ州知事を務めてきた政治家で現在60歳。同州で高校教員として長年、働いた後、2007年から19年まで下院の民主党議員だった。全米レベルでの知名度はとくに高くないが、国政、さらに州政治では強固なリベラル派として知られる。
事前の予想ではハリス氏はペンシルベニア州のジョッシュ・シャピロ知事を副大統領候補に選ぶだろうとみられていた。同州がミネソタ州よりも大きく、競合州だからシャピロ氏とのコンビの方が集票上、有利だという選挙対策の理由からの推測だった。
だがハリス氏はユダヤ系で政策面でもより穏健なシャピロ氏よりも、ずっと左派のウォルズ氏を選んだ。この選択はハリス氏本来の強固な支持基盤の民主党内リベラル左派の重視だともされている。ちなみにミネソタ州は全米でもリベラル志向が伝統的に強く、1984年の大統領選挙では共和党のレーガン候補に歴史的な敗北を喫した民主党のモンデール候補が全米50州で唯一、勝利した州だった。
ウォルズ氏も下院議員、さらに州知事として公的支出を増やす「大きな政府」、人口妊娠中絶への寛容な態度、国防費の抑制など、リベラル政策の推進で知られてきた。白髪の外見こそ若さを感じさせないが、演説や政策論、有権者との接触では精力的な動きを発揮する。
なお共和党側はウォルズ氏が中国との交流が多かったことや、州兵時代に戦闘経験がなかったのにあったかのような発言を続けてきたことを取り上げて、批判の対象とし始めた。
総括としてはこのハリス・ウォルズ組のコンビは共和党側のトランプ・バンス組に対して、リベラル対保守の対比をいっそう鮮明にする構図となったといえる。
(終わり。その1、その2、その3)
*この記事は雑誌「月刊 正論」2024年10月号に掲載された古森義久氏の論文を一部、書き直して転載しました。
トップ写真:集会を開くハリス候補(2024年9月29日ネバダ州ラスベガス)出典:Mario Tama/Getty Images
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