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総選挙:「極右」も「ポピュリスト」も出てこない日本

Japan In-depth / 2024年10月22日 14時58分

総選挙:「極右」も「ポピュリスト」も出てこない日本


宮家邦彦(立命館大学 客員教授・外交政策研究所代表)


宮家邦彦の外交・安保カレンダー 2024#43


2024年10月21-27日


【まとめ】


・今週の注目は10月27日の総選挙結果で、予測が難しい状況にある。


・政治評論家は選挙を楽しんでいる一方、筆者は日本でも極右やトランプ現象が起こりうるかに関心を持っている。


・過去の社会状況から中道派の凋落が予想されるが、日本には欧米のような極右の台頭は見られないかもしれない。


 


今週の最大関心事は10月27日の総選挙の結果だろう。過去10年間の総選挙・参議院選挙とは異なり、今回ばかりは予想が「非常に難しい」のではないか。マスコミ各社はそれぞれの傾向を反映した「世論調査」の結果に基づく予想を繰り返している。だが、結局のところ、選挙は蓋を開けて見るまで分からない、のだろうと思う。それにしても昨今、各社・各局の政治部長や政治評論家が何と「生き生きとしている」ことか。選挙は人を変えると言われるが、この種の選挙関連番組を見ていると、政治評論家という職業が如何に「お気楽」なものか、良く分かる。政治評論家は絶対落選しない。候補者たちが「生きるか、死ぬか」で戦っているというのに・・・、である。


 


筆者に競馬の予想屋のような仕事は向いていないので、選挙の結果を予想するつもりはない。でも、今回の総選挙の結果が、これまで筆者が唱えてきた「仮説」を証明するか否か、には大いに関心がある。その「仮説」とは、欧州のいわゆる「極右」躍進と米国のトランプ現象に似た状況は実は日本でも起きているのでは、というものだ。


 


ソ連崩壊と冷戦終結でイデオロギー対立の意義は薄れた。その後のIT革命と「新自由主義」グローバル化経済により、既存の製造業は衰退し、貧富の格差も拡大した。工業地帯では、その犠牲となった「忘れ去られた」人々の不満が充満している。こうして中道左派・右派は凋落し、左右極端派がそれらの不満の受け皿となった。


 


その典型例が、欧州のAfD、ルペンなどの強硬保守派や米国のトランプ現象などである。だが、こうした状況は、失われた30年を経験した日本でも、実は起きているのではないか。そうだとすれば、中道右派の自民党が信頼を失い、中道左派の立民党なども伸び悩むのではないか。これがこれまでの筆者の「仮説」であった。


 


おっと、どっこい。やはり、日本は欧米とは違うのかもしれない。報じられる限り、今回日本では欧州のような「極右」が台頭してきそうもない。トランプのような天才的ポピュリストも出てこないようだ。やはり、日本社会は欧米とは異なるのか?いやいや、まだ「出てこないだけ・・」と見る向きもあろう。果たして結果は如何に?


 


選挙と言えば、先週モルドヴァで国民投票があり、「EU加盟」が僅差で了承されたが、この選挙には某国(恐らくロシア?)などの選挙買収・介入工作があったと言われている。同国東側一部は事実上ロシアが支配しているが、プーチン氏は更に影響力を強めようとしているのか。モルドヴァとウクライナの位置関係を見れば一目瞭然だが・・・。


 


続いては、いつもの通り、欧米から見た今週の世界の動きを見ていこう。ここでは海外の各種ニュースレターが取り上げる外交内政イベントの中から興味深いものを筆者が勝手に選んでご紹介している。欧米の外交専門家たちの今週の関心イベントは次の通りだ。


 


10月22日 火曜日 スロヴァキア、ハンガリー・セルビアと三国首脳会談を主催


 ロシア、BRICS首脳会議を主催(3日間)


 欧州議会、350億ユーロの対ウクライナ借款について採決


 


10月24日 木曜日 フランス、レバノンに関する閣僚レベル国際会合を主催


G20財務大臣会合(ワシントン)、G20貿易・投資大臣会合(ブラジル)


 


10月25日 金曜日 キリバス大統領選挙


 


10月26日 土曜日 ジョージア議会選挙


 豪クィーンズランド州総選挙


 IMF・世銀会合終了


 


10月27日 日曜日 リトアニア、議会選挙決選投票


ブラジル、地方選挙(第二ラウンド)投票


ウルグアイ、大統領選・議会選投票


ウズベキスタン総選挙


ブルガリア総選挙


日本総選挙


 


10月28日 月曜日 カナダ・サスカチュワン州議会選挙


モンテネグロ、EU・西部バルカン諸国の閣僚会合を主催


 


最後はいつものガザ・中東情勢だが、このところ筆者は「いつ行われてもおかしくない」イスラエルによる対イラン大規模直接報復攻撃がいつ、どのように行われるかに注目してきた。ところが、何と、イランの弾道ミサイル攻撃から3週間も経つのに、イスラエルは未だ対イラン直接報復攻撃を実施していないのだ。何故だろう?


 


先週は「イスラエルのネタニヤフ首相は、対イラン報復攻撃を11月の米大統領選挙まで待つつもりなどない。180発もの弾道ミサイルを領土内に直接撃ち込まれたのだから、報復攻撃の大義名分は十分だからだ。」と書いたが、なぜ早くやらないのだろうか?恐らくは、米国との調整が上手く行っていないから、だろうと筆者は思う。


 


流石のイスラエルも、今回は米側が反対している核施設や原油施設を狙わないのかもしれない。そんな情報が既に報道され始めている。でも、それでイスラエル国内、特に現ネタニヤフ内閣は「持つ」のだろうか。この関連で興味深いのは、イラン寄りの情報を流すことで有名なサイトが興味深い情報を流していることだ。


 


何と、米情報機関が作成したと思われる「イスラエルの対イラン攻撃」関連情報がすっぱ抜かれている。内容はどうやら本物らしく、米政府内では早くも犯人探しが始まっている。イランの情報機関がハッキング等で入手できた可能性は低い。されば、米政府部内からの秘密漏洩の可能性が高いと見ているのだろうか。


 


真偽は不明だが、それにしてもタイミングが良すぎる、のではないかねぇ。穿った見方をすれば、米国政府内の誰かがイスラエルの攻撃のタイミングを封じるために意図的に流した可能性だって考えられるのだが・・・。いずれ関連情報が報じられるだろうから、今週はこのくらいにしておこう。いつものとおり、この続きは今週のキヤノングローバル戦略研究所のウェブサイトに掲載する。


トップ写真:衆議院本会議に出席する石破茂首相。2024年10月9日。


出典Photo by Tomohiro Ohsumi/Getty Images


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