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インドネシアのプラボウォ新政権、前途は多難か

Japan In-depth / 2024年10月23日 16時3分

インドネシアのプラボウォ新政権、前途は多難か


中村悦二(フリージャーナリスト)


【まとめ】


・プラボウォ・スビアント氏がインドネシアの8代目大統領に就任し、貧困対策や学校無料給食プログラムを公約に掲げた。


・新内閣は年8%の経済成長を目指すが、過去の成長率は5%前後であり、実現は困難とされている。


・新首都「ヌサンタラ」の建設は遅れており、首都機能の移転が限定的になる懸念もある。


 


インドネシアで2024年10月20日、8代目の大統領に、国防相を務めていたプラボウォ・スビアント氏(73歳)が就任した。大統領の任期は5年。従って、2029年10月までとなる。


プラボウォ国防相は、2024年2月14日に実施された大統領選挙により、ジョコ・ウィドド大統領の後任となることが決まっていた。


プラボウォ新大統領は2024年10月20日のジャカルタで行った40分近い就任あいさつで、「汚職をなくし、貧困もなくしていかなければならない」とし、大統領選で公約に掲げた「学校無料給食プログラム」を念頭に「補助金などの支援は本当に困っている人たちに届けたい。子供たちに栄養ある食べ物を」と強調(同日付ジャカルタ発時事通信)。


副大統領には、ウィドド前大統領の長男で、中部ジャワ州ソロ市の前市長であるギブラン・ラカブミン・ラカ氏(37歳)を選んだ。


しかし、早くも「同政権の前途は多難」とのささやきが漏れている。


・軍を追われた過去


プラボウォ新大統領は、スハルト元大統領の失脚につながった抗議活動を巡り人権侵害容疑で、26年間の長きにわたり軍を追われた経験がある。


過去2回の大統領選で、ジョコ氏に敗れていたが、ブラボウォ氏は目覚ましい復活をとげたことになる。


プラボウォ新大統領は、ジャカルタの国民協議会議事堂での就任あいさつで、「インドネシアは試練や障害を恐れない勇敢な国にならなければならない。わが国の歴史は英雄的な行為、犠牲、勇気に満ちあふれている。勇敢な国では、不可能を可能にする」と強調した。


 


・就任式典には錚々たる面々が出席


就任式典には、日本から高村正彦元外務大臣が出席したほか、東南アジア主国連合(ASEAN)からボルキア・ブルネイ国王、マルコス・フィリピン大統領、アンワル・マレーシア首相、フン・マネット・カンボジア首相、ローレンス・ウォン・シンガポール首相らが出席。東チモールのシャナナ首相、セルビアのブチェビッチ首相、韓国の韓悳洙国務総理、中国の韓正国家副主席、豪州のマールズ副首相兼国防相、ニュージーランドのピータース副首相兼外相らも出席者に名を連ねた。 


 


・新内閣は8%成長を狙うが、新首都「ヌサンタラ」の建設は遅延


プラボウォ大統領は10月20日の就任後に内閣の陣容を発表した。予想されていた通り、ムルヤニ財務相が続投となり、政策の継続性を示唆したものと受け止められた。同大統領は経済成長率を年8%に押し上げ、投資誘致を図りたい考えとみられているが、ここ数年の経済成長率は5%前後で推移している。8%成長を実現するのは容易ではない。


プラボウォ政権は、「人口増でジャカルタ沈没」との揶揄に対抗する形で、カリマンタン島東部で進めている新首都「ヌサンタラ」の建設プロジェクトを宣伝したいところだろうが、大統領宮殿はほぼ完成したとはいえ、政府庁舎や官舎は建設中で、当初7月に予定されていたヌサンタラでのジョコ大統領の執務開始や公務員らの転入は実現していない。


早くも、「ヌサンタラ」建設プロジェクトは「首都機能の一部移転に終わってしまうのではないか」との悲観的な見方が出始めている。


トップ写真:インドネシア・ババカン・マダンの投票所で投票後、インクで汚れた指を見せるインドネシア大統領候補プラボウォ・スビアント氏。 2019年4月17日。


出典:Photo by Ed Wray/Getty Images


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