中国の台湾戦略、そして尖閣戦略は その3 台湾攻略はいまや多様
Japan In-depth / 2024年10月29日 17時0分
中国は台湾攻略の目的のために、たとえば空爆やミサイル攻撃だけを実施するかもしれない。その場合、台湾領内が主標的でも周辺の米軍基地も攻撃するかもしれない。日本国内の米軍基地も標的となりえます。このミサイル攻撃と空爆だけでも台湾を屈服させられるかもしれない。もしそうでなければ、同時に上陸作戦を実施するでしょう」
古森「日本からすると、中国軍の台湾上陸作戦がなくてもミサイル攻撃を受けるという危険きわまるシナリオですね。日本側ではなかなか仮定の仮定でも出てこない想定です」
ヨシハラ「多様な選択肢としては海上封鎖という手段もあります。中国軍が台湾周辺に海上封鎖網を敷き、締めつけるわけです。台湾の港の外周への機雷敷設や潜水艦での威嚇的なパトロールもあるでしょう。その前段階では正規の海軍は投入しない海上検疫(quarantine)という方法も考えられます。中国海警や海洋民兵という準軍事組織により台湾に出入りする船舶を選別的に制約して圧力をかける。
海上封鎖ならば戦争行為に近い。しかし海上検疫だと、その定義が難しい。だからアメリカや日本など関係諸国にとってどう対処すべきかが難儀となります。海上検閲では第三国の船舶が中国の港に立ち寄りを求められ、検疫を受ける。だがその動きは軍事的な強制行為ではない。ワシントンや東京ではこの事態をどうみて、どう対応するか、を考えます。その時間が中国にとっては有利になるわけです」
古森「なるほど、台湾にとっては存続を左右するほどの危険な事態となっても、軍事攻撃を受けているわけではない。だから米軍の介入にも直線的にはつながらない」
(その4につづく。その1、その2)
*この記事は雑誌「月刊 正論」2024年11月号に掲載された古森義久氏の論文の転載です。
トップ写真:中国人民解放軍の海軍潜水学校(2024年4月21日)出典:Photo by Kevin Frayer/Getty Images
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