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中国の台湾戦略、そして尖閣戦略は その4 斬首作戦もありうる

Japan In-depth / 2024年10月30日 0時3分

さらにもうひとつ、中国側には大きな武器があります。それは核兵器使用の威嚇です。中国が台湾攻撃に着手し、アメリカが軍事介入を考慮する段階で人民解放軍が短距離、中距離の核兵器を動員する動きをみせることです。そして日本に対してもこの核恫喝は向けられます。中国側は核兵器の臨戦態勢を高める。あるいは台湾海峡方向へと配備を動かす。さらには中国の国営テレビでその核兵器の動きを報じる。米側の情報収集は優れているから、その種の核の動きは公開されなくてもすぐ察知できます。





中国の明確な意思がその段階では不明でも、発せられる警告は明らかです。もしアメリカや日本が台湾有事に介入すれば、小型にせよ核兵器を台湾海峡で使うかもしれない、あるいは日本国内やグアム島の米軍基地を中距離核兵器の標的とするかもしれない。だから台湾有事への軍事介入は止めろ。アメリカ本土を撃つわけではないから、本格的な米中全面戦争ではない。中国側はこんな核威嚇を発する可能性があるのです。





とくにいまの中国は、日本やグアム島に届く中距離核ミサイルではアメリカよりもずっと優位に立っています。アメリカはソ連との中距離核戦力破棄の条約で東アジアでも地上配備の中距離核ミサイルは廃棄したままだからです」





古森義久「この核論議は台湾有事をも超えて日米同盟の本質部分にもかかわってきますね。日米同盟の米側の拡大核抑止策では、日本が核の威嚇、あるいは攻撃を受けた際はアメリカは必ず核の報復をすることになっている。しかし、現実に台湾有事の延長で万が一にも中国が日本を核攻撃した場合、アメリカは中国に核攻撃を加えるかどうか。もしそうなれば、中国はアメリカ本土に核の報復をするかもしれない。東京への核攻撃に対して中国に報復し、その結果、ロサンゼルスが核攻撃を受けてもよいのか、ということになる。





実際に中国の一部の将軍はそうした仮定の脅しを米側にかけたことがあります。台湾有事への介入を防ぐためです。日本に対しても2021年7月には中国内部の軍事専門家集団が『中国軍は日本が台湾有事に軍事介入すれば、日本への核攻撃に即時に踏み切る』という戦略をまとめた動画を中国全土に拡散したことがあります。約6分ほどのこの動画はアメリカやインドのメディアでも報じられ、中国当局は禁止としました。





しかし中国側には核先制不使用、つまり戦争になっても自国から最初には核兵器を使わないという公式の対外宣言にもかかわらず、実際には非核の日本に対しても核攻撃をするというシナリオを政府が許容する形で発表する土壌があるのです。日本の官民はこの種の核攻撃の脅しを受ければ、右往左往して、台湾支援どころではなくなるでしょう。日本がまだ直接の軍事攻撃を受けていない段階でも、そうなりうるのです」





(その5につづく。その1、その2、その3)





*この記事は雑誌「月刊 正論」2024年11月号に掲載された古森義久氏の論文の転載です。





トップ写真:台湾建国記念日に出席する頼清徳総統(左から2番目)2024年10月10日台湾・台北 出典:Photo by Annabelle Chih/Getty Images




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