中国の台湾戦略、そして尖閣戦略は その5(最終回) 中国の核の脅しと日本の麻痺
Japan In-depth / 2024年10月31日 17時0分
トシ・ヨシハラ「その心配は必要ないでしょう。トランプ氏のときどきの言葉よりも、トランプ陣営としての実質的な政策を重視すべきです。トランプ陣営はウクライナへのアメリカの無期限の支援は、最大の脅威である中国への抑止の資源を減らすとして、アジア最優先の政策を固めつつあります。そのためには台湾支援を強固にする。台湾を失えば、アメリカのアジア全体での年来の政策がほころびてしまう。日米同盟も崩れかねない。中国への断固たる対決姿勢と台湾への強固な支援はトランプ前政権時代に明確でした。
年来の対中関与策を失敗だったとして破棄して、強い抑止策を初めて打ち出したのはトランプ政権でした。台湾との関係を実質的に格上げしたのもトランプ政権です。トランプ氏自身が大統領に決まってすぐ台湾の総統に直接の連絡をとったことも、前例のない台湾重視の姿勢でした。だからトランプ次期政権が台湾を守らないというのは、根拠のない推測です」
古森「大統領選挙の結果はまだわかりませんが、ハリス政権になった場合の対中政策はどうでしょうか。バイデン政権下でハリス副大統領が対中政策の形成に関与したり、中国について発言したことは皆無のようですが、バイデン政権全体としては中国に対してトランプ前政権の政策のかなりの部分を継承して、強固な姿勢をとっているようにもみえます」
トシ・ヨシハラ「確かにハリス氏自身の対中政策、あるいは対外政策全般となると、大統領となった場合、貨物や乗客のいない船という感じがしますね。内容がみえない、わからない、という意味です。だからハリス政権の対中政策はまずはバイデン政権の延長とみるべきです。
バイデン、トランプ両政権の対中政策は共通点も指摘できますが、違いも大きいです。バイデン政権は中国に対して『管理する競合』と呼べる政策を採ってきました。つまり中国とは競合するが、その競合は対立だけでなく、分野によっては協力もある。そのうえで全体の関係を適切に管理する。こんな内容です。
その結果、中国の軍事膨張や経済恫喝を非難しても、気候変動や国際テロ対策では協力しようという姿勢をとる。中国側からすれば、その協力の要素を強調して、他の領域での米側の譲歩を引き出すことができる。
一方、トランプ政権の対中政策は中国共産党政権との正面衝突を辞さず、という対決が基調でした。そのためには中国との経済関係のディカップリング(切り離し)をもためらわない、という構えでした。この基本は二期目のトランプ政権でも変わらないでしょう。となると、中国側が好むのは当然、ハリス政権の誕生ということになります。しかしハリス政権でも台湾への政策の基本は変わらないでしょう」。
(終わり)
*この記事は雑誌「月刊 正論」2024年11月号に掲載された古森義久氏の論文の転載です。
トップ写真:漢江演習で頼清徳総督がトリアージや医療行為の実用性を調査した様子(2024年7月23日、台湾・花蓮県)
出典:Photo by Annabelle Chih/Getty Images
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