航空自衛隊 次期初等練習機選定は審査が僅か一ヶ月で試乗もなし
Japan In-depth / 2024年12月4日 19時0分
清谷信一(防衛ジャーナリスト)
【まとめ】
・防衛省は航空自衛隊のT-7後継機として米テキストロン社製T-6を選定したが、その選定プロセスには疑問が残る。
・選定期間が非常に短く、試乗も行われないまま決定されたことが不透明で、特にT-6選定が米国の影響下で決まった可能性が指摘されている。
・不透明で不公正な入札が続けば、防衛省や自衛隊に対するだけでなく、「日本政府への不信感」も高まり、今後の外交や自衛隊の装備調達にも悪影響を及ぼす可能性がある。
防衛省は11月29日、航空自衛隊の現用の初等練習機T-7の後継として米国のテキストロン・アビエーション・デフェンス社のT-6を選定したと発表した。選定された機体は妥当だが、選定プロセスには大きな疑惑が残る。
候補機は兼松株式会社の提案したT-6、株式会社SUBARU提案のピラタス・エアクラフト社のPC-7MKX、第百商事が提案したターキッシュ・エアロスペース・インダストリーのHurkus(ハークス)の三機種が候補であった。新東亜交易株式会社は地上教育機材のみを提案した。
T-7は富士重工(現スバル)が開発し、2000年度に採用されて、2008年度まで49機が調達された。T-7は2030年度から順次退役していく予定である。
T-6は2025年度から調達が予定されており、調達予定は36機で2030年度までに調達される予定である。調達単価は12.1億円で、シミュレーター6基などの地上機材含めた総額は1336.5億円と見込まれている(為替レートは1ドル=139円と想定)。なお来年度予算において、機体2機及び地上機材で212億円が要求される予定である。ライセンス生産はなく、すべて輸入である。
T-6は1100馬力のターボプロップエンジンを搭載し、上昇性能は毎分1,372メートル、航続距離は1,574キロメートルである。米空海軍の他、多くの国で採用されている実績がある。なお、防衛省によると今般選定されたT-6は次期初等練習機及び地上教育器材の選定にあたって発出した提案要求書に応じて、兼松株式会社が提案した機体であり、既存のT-6のモデルに当てはまるものはない。恐らくはかなり機能を絞った廉価版ではないか。
選定の第1段階評価においては、次期初等練習機、地上教育器材及び後方支援その他に関し、必須要求事項を満たすか否かが評価された。T-6及び関連する地上教育器材並びに株式会社SUBARU提案のP-C-7MKX及び関連する地上教育器材はこれを満たしたが、Hurkus及び関連する地上教育器材はこれを満たさなかった。また、新東亜交易株式会社は地上教育機材のみの提案で機体が含まれておらず、必須要求事項を満たさなかった。
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