トランプ氏はなぜ勝ったのか ドーク教授の分析 その4 宗教の変化が社会を変える
Japan In-depth / 2024年12月7日 21時22分
古森「キリスト教信者の数の確実かつ大幅な減少ということですね。この減少がアメリカ社会の思潮を変える。さらに無宗教だと宣言する人たちの比重の変化にも意味がある、ということでしょうか」
ドーク「さらにもっと重要なのは、世論調査機関として有名なピュー研究所の最近の調査結果です。それはキリスト教信者たちは2070年までに多数派の地位を失い、アメリカ全国民の46%になるという予測です。他の予測ではキリスト教信者は2070年の時点で全国民の39%になるという見通しもあります。その場合、無宗教者は全国民の48%になると予測され、キリスト教徒はそれ以下の人数になる、というのです。
この傾向はヨーロッパではすでに起きています。イギリスでは2009年に無宗教者がキリスト教徒の数を抜き、国内最大のグループとなりました。オランダでは国民のうち47%が自分自身をキリスト教徒だと認めているにすぎません。北米のカナダではキリスト教徒は全国民の53%なのに対して、無宗教は35%です。
しかしアメリカも含めて、これら欧米のすべての諸国でキリスト教徒だと自認する人たちがみな教会の日曜礼拝に出るわけではありません。性道徳に関するキリスト教の伝統的な教えを支持しているわけでもありません。その種の教えを支持する人たちの数は減少しつつある名目上のキリスト教徒の数よりもはるかに少ないことも確実なのです。
最近のワシントン・ポストに同紙のコラムニストで政治学者のシャディ・ハミド氏が書いた記事はアメリカの政治地図を塗り替えている社会的変化にさらなる光を当てています。ハミド氏は労働者階級と民主党との間の伝統的な連帯はもはや存在しないと指摘しました。最大所得の上位5%は共和党に投票する可能性が最も低い、というのです。つまり民主党は労働者層の白人有権者たちを2対1の差で失っている、というのがハミド氏の指摘なのです。
ハミド氏は投票行動を理解する鍵は、もはや階級ではなく文化であると指摘します。具体的には、アメリカ人の投票方法の決定的な要因は高等教育なのだと指摘するのです。『民主党が上昇志向の人々や高学歴の人々に支配されるようになり、彼らの感性によって形作られるようになるにつれて、社会的に進歩的になり、階級的関心事ではなく文化的な関心事を中心に自らを定義するようになった』と書いています。 これは事実上、政党間の価値観のギャップを広げることになるのです」
(その5につづく。その1、その2、その3)
トップ写真:ジョージ・フロイドの殺害に対する抗議デモ 2020年6月7日、カリフォルニア州ロサンゼルスのハリウッド地区 出典:David McNew/Getty Images
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