安っぽい陰謀論がはびこる国 陰謀論とデマは双子の兄弟 その4
Japan In-depth / 2025年1月30日 11時0分
この映画の最後の方でも、2039年になれば機密文書が公開されて……という台詞があったし、実際に今次の機密解除に期待する向きも多いが、これまた樫山氏が記事の中で明確に述べているように、否定的な見方をする人も結構多い。と言うのは、全部で5万頁にも及ぶという機密文書だが、その90%以上はすでに公開されていて、そこには国家的な謀略であることを示唆する文言など一切出てこない。しかも、本当に全ての機密が解除されるのかどうか、その範囲が明確ではない。くだんの機密解除は2月初旬とのことなので、まあ、一縷の望みは持ち続けるとしよう。
ここでわが国に目を向けると、安倍晋三元首相が射殺された事件(2022年7月8日)に絡んでも、陰謀説が流布している。これまた、前述の「魔法の銃弾」ではないが、銃の専門家に言わせると弾道が不自然、といった記事が週刊誌に掲載され、ネット上では、別の狙撃犯がいたに違いないという憶測が拡散された。こちらは、別の意味で首をひねるしかない話で、そもそもこの事件で用いられたのは手製の銃である。既存の弾道工学に照らして不自然な所見があったとて、重大な疑惑とまで言い得ることか。さらに言えば、別の狙撃犯がいたというのなら、どのような銃が使われ、その弾丸はどうなったのか。そればかりではない。救急搬送に異様なほど時間がかかっていたとか、しまいには中継映像に不自然な点がある、などと主張する人まで現れる始末だ。これはもはや、人類は実は月へは行っていない、というのと同工異曲と言うべきであろう。
不可解と言うよりもはや笑うしかないのは、どこの誰が真犯人なのか、という点で、最近では「財務省黒幕説」まで流布している。この説の始末が悪い点は、高名なエコノミストや政治家までが、火に油を注ぐような(当人にはそのつもりがないのかも知れないが)、発言をしていることだ。ある政治家の、財務省改革に手を染めた人間は、「元政治家秘書とか、500人くらいの所在が分からなくなっている」という発言が拡散したりしているが、その人達が「消された」と考え得る状況証拠が、なにかあるのだろうか退職した人が(職場や上司への不満があった場合は特にそうだが)、電話番号まで変えて人間関係を断ち切ってしまうというのは、割とよくある話ではあるまいか。
少し考えていただきたい。仮に、財務省の内部なり、連携する国家権力の一部に、暗殺をも厭わない特殊な勢力が存在するとしよう。そして、現政権の行き方がどうあっても容認できない、と考えたとしよう。さらに、警備や救急といった部門にまで、その勢力は影響を及ぼし得るものだとしよう。それならばどうして、安倍晋三氏が現職の首相であった当時に、その力を用いなかったのか。ケネディ暗殺にまつわる疑惑と決定的に異なるのは、この点ではないか。大体、先ほどの銃火器の話ではないが、日本の官僚機構について少しでも勉強したならば、財務省が警察や消防(=救急)と結託して権力者に挑むなど到底あり得ない、ということが分かるはずである。官僚機構は断じて一枚岩ではなく、内部では陰湿な勢力争いが絶えない。とりわけ先鋭に対立しているのが、戦前の内務官僚の衣鉢を継ぐ警察官僚と、経済官僚(旧大蔵官僚=財務官僚)なのだ。これは、日本の政治刑事について少しでも勉強した者にとっては、常識だと言っても過言ではない。
以上を要するに、ケネディ暗殺にまつわる陰謀説と、安倍元首相の暗殺にまつわるそれとは、似ても似つかぬものなのである。
次回・最終回は、目下マスメディアを騒がせている、兵庫県の問題と元SMAPの問題について見てみる。(その1、その2、その3)
トップ写真:安倍元首相の国葬(2022年9月27日日本・東京)出典:Photo by Eugene Hoshiko/Pool/Getty Images
-
- 1
- 2
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
ケネディ暗殺事件などの真相解明なるかトランプ大統領、機密文書解禁命じる
Japan In-depth / 2025年1月28日 11時0分
-
ニュースの核心 「ケネディ暗殺」の〝機密解除〟トランプ大統領が公約「ディープ・ステート退治」に本格着手 安倍元首相の真相解明はいつ
zakzak by夕刊フジ / 2025年1月24日 15時30分
-
ケネディ元大統領暗殺事件、全ての機密文書公開を命じる大統領令にトランプ氏が署名
日テレNEWS NNN / 2025年1月24日 9時22分
-
トランプ氏、ケネディ元大統領とキング牧師の暗殺の機密文書公開へ
ロイター / 2025年1月20日 10時23分
-
ケネディ氏暗殺文書公開へ トランプ氏、演説で表明
共同通信 / 2025年1月20日 9時58分
ランキング
-
1死亡事故発生の「危険な踏切」 鉄道会社・神戸市・国交省が再発防止策議論 工事主体や費用巡り意見が食い違う場面も 多くの出席者が「踏切廃止」提案
ABCニュース / 2025年1月30日 19時56分
-
2マイナカードと免許証の“一体化”は「義務ではなく個人の自由」注意点とメリット&デメリット
週刊女性PRIME / 2025年1月30日 18時0分
-
3沖縄・南大東村で郵便物584通を配達せず 日本郵便沖縄支社、期間雇用の従業員を懲戒解雇
沖縄タイムス+プラス / 2025年1月31日 7時26分
-
4旅券発給拒否、二審も「違法」=安田純平さんの訴え認める―東京高裁
時事通信 / 2025年1月30日 19時26分
-
5東京圏の転入超過13.6万人=24年、コロナ前水準に―総務省報告
時事通信 / 2025年1月31日 8時41分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください