安っぽい陰謀論がはびこる国(下) 陰謀論とデマは双子の兄弟 最終回
Japan In-depth / 2025年2月1日 18時0分
ことほど左様に、前提をまったく間違えた「情報」がネットで拡散し、その情報を信じ込んだ人たちが、誰かを悪者と決めつけて袋叩きにする、というのが、目下世間を騒がせている問題の本質だと私は考える。
今月初め、元兵庫県議会議員で、斉藤知事の疑惑を追及していた百条委員会の委員の一人であった竹内英明氏が亡くなった。自殺とみられている。
以前にも本連載で取り上げたことがあるが、この百条委員会をはじめ、斉藤知事のパワハラや疑惑を追及する県議達に対して、
「斉藤県政を潰そうとする、役人や裏社会(港湾利権にからんで動いたとされる)によるデッチ上げだ」
という陰謀論が拡散された。
その旗振り役の一人として、NHKから国民を守る党の立花孝志党首の名が上げられる。
なにしろこの人は「斉藤知事を当選させるために」知事選に立候補し、百条委員会に名を連ねる県議の自宅兼事務所に「突撃」する動画まで公開していた。結果、竹内氏は「家族を守るため」として県議辞職に追い込まれている。その後もSNSでの誹謗中傷はやまず、今次のような悲劇に至った。
その竹内氏の自殺の報に接した立花党首は、
「兵庫県警から任意の事情聴取を受けており、間もなく逮捕されることになっていた。それを苦にしての自殺」
などと発信したのである。この発言は、異例なことに県警本部長によって全面否定され、さすがの立花党首も、
「間もなく逮捕されるというのは誤りでした。申し訳ありません」
などと謝罪動画を投稿した。
ゴメンで済んだら警察は要らない、とはこういう時に使うべき言葉ではないだろうか。少なくとも公党の責任者である以上は、どういう情報源によって「間もなく逮捕」などと発信したのか、説明責任を果たすべきだ。まさか都合のよいときだけジャーナリストを名乗って、
「ニュースソースを秘匿する義務がある」
などとは言い出さないでしょうな。これはさすがに「笑」とは書けない。
立花党首の発言は、少なくとも結果的にはデマであった。とは言え、現行法では罪に問えないのかも知れない。死者に対する名誉毀損に該当する可能性はあるものの、それには遺族による親告が必要であると、複数の弁護士が指摘してはいるが。
ただ、こういうことは言える。
飲酒運転に起因する交通事故で子供が犠牲になったことをきっかけに、罰則が強化された事例がある。それと同様、SNS上での誹謗中傷に対する罰則の強化と、それを煽るような言動に対しても責任を問えるようにする法整備は、今こそ必要なのではないか。
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