【エンタがビタミン♪・番外編】アルマーニの制服導入問題 置き去りにされた本質
TechinsightJapan / 2018年2月12日 19時26分
泰明小学校の標準服にアルマーニのデザインを導入するというニュースが注目されていますね。アルマーニに12年間勤めてきた筆者としても驚きのニュースでした。何故ならアルマーニが小学校の制服のデザインを手掛けるという事例は筆者の知る限りこれまでにはなく、更にアルマーニジャパンは支社なので今回のような場合はミラノ本社の非常に厳しい承認を得なくてはなりません。正直なところよく本国が承認したなということも驚きのひとつでした。
【服育がアルマーニ?】
「なぜ小学校の制服にアルマーニ?」「校長先生がアルマーニの御贔屓だったから?」「会社と何かしら関係があるの?」など疑問が浮かびましたが、学校側から出た言葉は、銀座にある小学校らしさ、泰明小学校のブランドイメージ、服育(ビジュアルアイデンティティー)の確立のため、などといったものでした。更に選んだ経緯がアルマーニだけではなく、銀座にあるブランド、シャネル、エルメス、または三越、松屋などにも打診をして最終的に賛同したのがアルマーニだったということ。その言葉に筆者は何とも言えない違和感を覚えたのです。それは候補として名前が挙がったブランドや百貨店は国も違えばテイストもバラバラで、共通点は「銀座にある高級ブランドだから」というただ一点であったから。尾木ママが「服育は造語です」とおっしゃってましたが、敢えて服育(ビジュアルアイデンティティー)という言葉を使わせて頂くとして、服装によって連帯感や泰明小学校の生徒である誇り、意識、それが銀座にある小学校に通う生徒に相応しい姿であり街のシンボルにもなる―というのなら、何故アルマーニなのかという問いに対して「他のブランドにも声をかけたが最終的に同意したのがアルマーニだった」という選び方が本当に140年の歴史がある小学校に相応しいのか。高級ブランドだからよし、「高級ブランド=銀座」というような表面だけを見た大人の世界の価値観で、銀座の街に140年前から存在し銀座の街と共に歴史を刻んできた泰明小学校のアイデンティティーが確立できるのか、私は疑問でなりません。
【ブランドには歴史と哲学がある】
アルマーニだけでなく、銀座に路面店を構えるラグジュアリーブランドにはそれぞれに歴史と哲学があります。アルマーニにはアルマーニの、エルメスにはエルメスの、シャネルにはシャネルの哲学があるのです。なぜそのブランドが生まれ、支持され世界的なブランドとなったか。そこには裏付けとなる歴史が刻まれているのです。たとえばアルマーニ氏はもとは医学生でした。兵役後ミラノのデパートでショーウィンドーの飾りつけの仕事をしたことからファッション業界に入り、デザインに目覚め、そして英国風のパリッとした固いジャケットやスーツが主流だったメンズスーツの世界に、柔らかい生地で仕立てた軽くて動きやすい、いわゆるアルマーニのソフトスーツを生み出して世界的なブランドへと成長させたのです。この革新的なソフトスーツは元医大生で身体の動きや動作について知り得ていたアルマーニ氏だからこそ生むことができたのだと筆者は考えます。また、エルメスはナポレオン3世の御用達となる高級馬具工房から生まれたブランドですし、シャネルはまだ女性がコルセットをして限りなくウエストが細いことが良しとされていた時代に「女性からコルセットを外した初めてのデザイナー」と言われています。ブランドにはそれぞれのお国柄や文化、生まれた背景、デザイナーの強い想いが哲学となって脈々と受け継がれているのです。
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