【海外発!Breaking News】武漢で連絡が途絶えた市民記者が伝えていたこと「感染は深刻」「生きている限り取材を続ける」
TechinsightJapan / 2020年2月11日 8時48分
昨年12月末に新型コロナウイルスの感染拡大の可能性を指摘し、中国当局から「デマを流した」と処分を受けた湖北省武漢市在住の医師・李文亮氏(33)が今月7日に死亡したことは記憶に新しい。日本時間11日午前8時の時点でコロナウイルスの感染者数は42,759人、死者は1,013人と感染は急速に広がっており、SNSでは政府の初期対応の遅さや情報公開のあり方に対して批判が強まっている。そんななか、武漢市に足を運び市民ジャーナリストとして活動していた陳秋實氏(Chen Qiushi、34)と6日午後7時以降連絡が取れなくなっていることが明らかになり、家族や友人が懸念を示している。人権問題に関わり活動していた弁護士でもある陳氏は武漢市から何を伝えていたのか。
新型コロナウイルスの発生源とされる武漢市に1月24日に入り、市内や病院などの様子を動画に収めてはSNSに投稿してきた市民ジャーナリスト・陳秋實氏と連絡が取れなくなっている。陳氏はカメラの前で「SNSにはたくさんのデマがあるだろう。でも私は自分の足で取材しており、嘘は一切ない」と語り、武漢市内の様子を伝えてきた。以下は1月30日の動画から抜粋したものだ。
「この動画を見てくれ。でもアカウントを削除されるから、メッセージアプリ『WeChat』でシェアはしなくていい。私もアカウントを失った一人だ。」
「これまでにいくつかの病院へ行ったが、医療関係者にインタビューはできていない。彼らが当局から取材に応じないよう命令されているからだ。」
「マスクなどの医療用キットの支援はあるが、それが必要な人たちに届いていない。警察官に『病院用のマスクをくれ』と言われたボランティアもいる。とにかく現場はパニック状態だ。医師が足りないんだ。新病院の建設に携わっている労働者の目は真っ赤で毎日2~3時間しか寝ていないと言う。」
「1月29日に武漢の病院に行った。人はあまりいなかった。何故かって? 感染者は家に閉じ込められているんだ。それに病院に行ってもベッドがないとわかっているから行かないんだ。」
「タクシー運転手は、武漢では12月中旬頃からウイルスの感染者がいたと言っている。だから彼らは『武漢の市場には行くな』と早いうちから言っていた。でも当局はウイルスなどないと言い張った。相手が物凄い曲者であることも知らないでね。」
「病院で待つ人の列に並んでみたが、病院の外では数日間診察してもらえないで号泣している人もいた。みんな診察してもらえないから5~6の病院を回っているんだ。熱があって咳をしていてもね。でも武漢市の人口は1100万人で、1つの病院に配られる検査キットは数百にすぎない。医療関係者にも必要だから、患者に回ってくるのは本当に少ないわけだ。検査をしてもらえるのはほんの一握りだ。咳をしているだけじゃ、検査キットは使わないんだ。だって数がないんだから。容態が悪くなってどうしようもなくなって検査して、命を救えるのか疑問だよ。」
「ある40代の男性は泣きそうになりながら、熱と咳が出て1週間になると言っていた。彼の兄も義母も熱がある。でも武漢市が封鎖される前、彼は大勢の親戚と夕飯を食べて友人らとマージャンをしたらしい。彼はもし自分が感染していたら、家族らはどうなってしまうんだろうと心配していたよ。」
「病院内は赤が感染者ゾーン、黄色が感染の可能性が高いゾーン、緑が安全なゾーンに分かれている。中国の国営放送テレビ局CCTV(中国中央電視台)の記者は防護服を着て完全防備の状態で緑のゾーンに入り、ビデオチャットで感染者と話ができるんだ。彼らは安全だよ。でも私にはそんなものはない。あるのは2枚のマスクとゴーグルだけだからね。でも怖いのは、どこの誰が感染しているか分からないってことだよ。自分も感染が怖いからコートは毎日外に干して殺菌してるんだ。」
「日本で武漢から来た観光客を乗せたバスの運転手が感染しただろう。これは恐ろしいことだよ。私は病院にもう3~4日は通っているんだ。ジャーナリストで私と同じことをしている人はいないと思う。私一人だ。精神的なストレスで押し潰されそうだよ。」
「昨日は同済病院にも行ったんだ。そこで見たのは椅子に座ったまま亡くなっている高齢の男性だったよ。項垂れて真っ青な顔だった。具合が悪かったけど、救急車が来るのが遅くて死んだと聞いた。家族が付き添っていたけど、後で黄色い袋に入れられて連れて行かれた。夜になると通りを忙しく行き交うのは救急車だ。それがどれだけ怖いかわかるかい?」
「最近はストレスが酷くて、呼吸をするのがつらいんだ。胸も少し痛むんだけど…。ただのストレスであるといいね。それに下痢もしているんだ。もともとお腹は弱いんだけどね。肺が痛むんだ。一日5~6時間もマスクをしているからかもしれないね。」
「もう一度言う。私は自分の目で見たことしか話していない。マスク、防護服、必需品、そして何より検査キットが足りないんだ。検査してもらえないから多くの人が家にいる。ベッドも医者も足りない。感染は深刻だよ。問題は山積みなんだ。」
「今日、司法局から電話があったよ。青島警察署からもね。調査に協力しろって言われて居場所を聞かれたから、武漢の友達の家だって答えた。居場所を知らないで、何を探しているっていうんだ。彼らは私の親にも連絡していたよ。ウイルスが自分の目の前に、中国当局が後ろにいるわけだからね。怖いよ。でも武漢で生きている限り取材を続けるよ。私は死ぬことは怖くない。中国共産党、私があなたたちを怖がっているとでも思ってるのかい?」
陳氏は感情を抑えながら、時に涙をこらえながら25分以上も話を続けたが、最後はかなり感情的だった。陳さんの母親は息子と連絡が取れなくなってからTwitterで情報提供を呼びかけていたが、陳さんの友人、徐暁冬さんは「彼が多くの病院を訪れていたことから、感染の危険があるため検疫を受けていると聞いた。ただ熱はなかったのになぜ連れ去ったのか。また通常は検疫の際に携帯電話は没収はされないはずだ。彼がウイルスに感染し、第二の李文亮氏になるのではないか」と懸念を示している。
画像は『陈秋实(陳秋實) 2020年1月31日付Twitter「出发了」』のスクリーンショット
(TechinsightJapan編集部 A.C.)
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