4党の連立政権合意を経て組閣へ(オランダ)
ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年6月17日 1時40分
オランダでは6月11日、2023年11月の下院選挙で第1党となった極右派の自由党(PVV)と、現在暫定的に首相を務めるマルク・ルッテ氏率いる中道右派の自由民主国民党(VVD)、中道の新社会契約党(NSC)、農民市民運動(BBB)による連立政権の閣僚ポストに関し、4党が合意した。
オランダ公共放送(NOS)によると、移民政策を重視するPVVから、新設の難民・移民相と、外国貿易・開発協力相、インフラ・水管理相、経済相、保健・福祉・スポーツ相の5ポストの選出を行う。VVDからは財務相、司法・治安相、国防相、気候・グリーン成長相の4ポスト、ガバナンスを重視するNSCからは、外相、内務・王国関係相、教育・文化・科学相、社会・雇用相の4ポスト、農民支援を重視するBBBからは、農業・漁業・食品安全・自然相、住宅・都市計画相の2ポストが選出される。首相候補には5月28日、官僚出身で司法・安全省の公務員トップを現在務めるディック・スホーフ氏を選出している。
次期連立政権の政策の柱にも合意、移民政策を厳格化
4党連立は5月15日に、前年11月の下院選挙(2023年12月21日記事参照)から約6カ月を経て合意に至っていた。翌16日には次期連立政権による合意概要を発表。「希望、勇気、誇り」をテーマに、次の10項目の柱に取り組む。
1. 基本的生活の保証と購買力の安定
2. 難民と移民の管理
3. 住宅整備、インフラ、公共交通機関、航空
4. 農業と漁業、食料安全保障、自然にとってのいい未来
5. エネルギー、供給の安全、気候変動への適応
6. アクセスしやすい公共サービス
7. 優れたガバナンスと強力な法の支配
8. 国家安全保障
9. 国際安全保障
10. 堅調な財政、経済、ビジネス環境
2.の難民・移民の管理に関しては、第1党のPVVの主張を受けるかたちで政策を厳格化し、無期限難民許可の廃止や強制送還などの具体的な措置を講じる。3.について、深刻な住宅不足問題には、毎年10万戸の住宅新設で対応する。4.は農業保護の観点から、窒素排出削減が求められるEUの硝酸塩指令で指定される脆弱(ぜいじゃく)地域やEUの自然保護区ネットワーク「Natura 2000」地域の見直しを行う。5.に関し、エネルギー転換に向けては、2025年に電気自動車(EV)の購入補助金は全て停止するが、自動車税(MRB)の優遇措置は継続する。気候基金は、二酸化炭素(CO2)回収・貯留(CCS)、グリーン水素などのイノベーションや技術への投資に充てる。原子力については、2基新設予定だったところを変更し、4基新設する。系統混雑の解決や洋上風力発電増設も行う。10.の経済・ビジネス面では、人材の確保、知識経済、イノベーション、デジタルインフラ強化を優先するほか、税制の見直しや企業のエネルギー転換促進を行う。
(成瀬杏子)
(オランダ)
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