米USTR、中国の社会主義市場経済を「略奪的な性質持つ」と批判、WTO協定順守報告書(米国、中国)
ジェトロ・ビジネス短信 / 2025年1月17日 16時25分
米国通商代表部(USTR)は1月15日、中国によるWTO協定順守に関する報告書の2024年版を公表した。この報告書は、2001年の中国のWTO加盟以降、米国の国内法で連邦議会への提出が毎年義務付けられているもので、報告書の公表は今回で23回目となる。2024年版の報告書は、(1)中国のWTO加盟国としての評価、(2)特定の貿易に関する懸念の2部構成となっており、懸念事項では産業政策や国営企業、補助金などを列挙している。
2024年版の報告書では、「中国の『社会主義市場経済』は進展し、明らかに略奪的な性質を持つようになった」とし、「今日の中国は外国の競合企業を排除し、中国企業が中国市場や世界市場の両方で、対象産業で優位性を確保できるよう、国家主導の非市場型のアプローチを経済や貿易に利用している点で、他の非市場経済国とは異なっている」と評した。
また「米国やその他の同様の考えを持つWTO加盟国は、中国の非市場経済システムによって生じた多くの問題に対処するために、長年にわたってWTOに焦点を当てたさまざまな戦略を追求してきたが、それらの問題に対処するには、必要に応じてWTO以外の場での行動も含め、新しくより効果的な戦略が必要なことは明白だ」とも記載した。USTRは過去の報告書でも繰り返し、WTO外での対抗措置の必要性を訴えていた(2023年2月28日記事、2024年2月27日記事参照)。
そのほか、報告書では、数十年前に米国の通商法が制定された際には、中国の非市場経済的慣行による影響は想定されていなかったとし、「われわれはこの行為に対抗するために、通商手段を更新するべく、議会と協力する方法を模索している」とも記した。2024年12月に発表された「2021~2024年サプライチェーンレビュー」報告書(2024年12月20日記事参照)や、1月に発表されたサプライチェーン強靭(きょうじん)化に向けた政策文書(2025年1月9日記事参照)でも、「現在の通商法のほとんどは、国内産業への損害が証明された後にしか対抗措置を発動できない」ことなどから、新しい対抗措置の開発の必要性を指摘していた。ただし、1974年通商法301条に基づく追加関税措置など、米国の通商法の下での一方的措置はWTO違反との裁定が出ている。
USTRのキャサリン・タイ代表は発表で、中国は依然として国際貿易システムにとって最大の課題だとした上で、「この報告書では、中国が反競争的な目的を追求するために展開している、常に進化し続ける非市場的政策や慣行の範囲と規模、それらが米国や世界中の労働者、企業、産業に与える深刻な被害について詳しく説明している」と述べた。
(赤平大寿)
(米国、中国)
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