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米シンクタンク、トランプ氏主張のベースライン関税の米国経済への悪影響を懸念(米国)

ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年10月21日 11時20分

米国シンクタンクのブルッキングス研究所とピーターソン国際経済研究所(PIIE)は10月17日、共和党大統領候補のドナルド・トランプ前大統領が主張するベースライン関税(全貿易相手国からの輸入品に対する一律10~20%の関税)が導入された場合の米国経済への影響に関するウェビナーを開催した。ブルッキングス研究所のウェンディ・エデルバーグ氏、PIIEのジェイソン・ファーマン氏〔オバマ政権の大統領経済諮問委員会(CEA)委員長〕およびモーリス・オブストフェルド氏(元IMFチーフエコノミスト)が登壇した。

冒頭、各登壇者はベースライン関税に関する自身の考えを述べた。オブストフェルド氏は、ベースライン関税が及ぼし得るインフレの影響について説明し、「関税は外国に対する税金ではなく、米国企業や家庭に対する税金だ。企業は製造に用いる中間財の輸入価格上昇に直面し、その価格上昇分を利益で吸収して穴埋めするか、消費者に価格転嫁するかの選択を迫られる」と述べた。また、「関税は逆進課税だ。安価な方が良いとされる利益率の低い商品を製造する企業の方が、消費者に価格転嫁する可能性が高く、そうした商品は低所得者層の生活を支える商品だ」と述べ、低所得者層への影響が大きいと指摘した。最後に、「米国経済への打撃は非常に大きなものになる」と強調した。

エデルバーグ氏は、ベースライン関税が長期的にインフレを加速させるのみならず、短期的にはサプライチェーンの混乱を招くと説明した。具体的には、トランプ前政権下で2018年に賦課が開始された、1974年通商法301条に基づく対中追加関税の第1段階(注1)の対象品目の輸入量が、関税の賦課開始前に4割増加したとする研究結果を引用しつつ、11月5日の大統領選挙でトランプ氏が当選した場合、企業はベースライン関税に先手を打つべく、選挙直後の12月にも、相当数の在庫を積み増す対応に取り掛かるだろうと述べた。その結果、「ビジネス全体に大きな混乱が生じることになる」と予測した。

ファーマン氏は、ベースライン関税がインフレを誘発した場合に、米国連邦準備制度理事会(FRB)が講じ得る金融政策スタンスについて説明し、「FRBが最も重要な問題と考えるのは、インフレ対策だ」と述べ、引き締めの姿勢を示唆した。しかし、金融引き締めは景気後退リスクを高めることになり、景気後退リスクを最小限に抑えようとすれば、長期的なインフレを招くリスクが高まるとして、「つまりFRBにとって良い答えはない」「おそらく政策金利は上昇し、その選択には大きなトレードオフが伴う」と米国経済への悪影響を指摘した。

またファーマン氏は、司会から、ベースライン関税の導入に際して連邦議会の承認を要するかと問われたのに対し、「トランプ氏は一方的に関税を賦課することができるだろう。トランプ氏は明確にそうするつもりだと示唆している」と述べた(注2)。

(注1)301条関税は2018年7月~2019年9月にかけて段階的に賦課が開始された。一部品目に対しては2024年9月~2026年1月にかけて段階的に賦課が開始または関税率が引き上げられている(2024年9月17日記事参照)。

(注2)トランプ氏の主張を反映した共和党の政策綱領は、2024年8月9日付地域・分析レポート参照。また、トランプ氏の関税政策の法的根拠は、2024年10月15日記事参照

(葛西泰介)

(米国)

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